名古屋で開業14年、顧問契約年間解約率3.6%
ポプラ社会保険労務士事務所
住所:〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内1-8-39 HP丸の内ビル3F
アクセス:名古屋市営地下鉄 桜通線・鶴舞線「丸の内駅」8番出口 徒歩1分
Q21 役職手当を就業規則や賃金規程に載せるときは、金額の記載も必要?
Q22 シフト制の正社員の労働時間や休日の書き方は?
就業規則とは、労働時間、休日、給与、退職、解雇、服務規律、懲戒処分など、従業員の労働条件や会社で守るべきルールを定めたものです。
労働基準法第89条では、常時10人以上の労働者を使用する事業場に、就業規則の作成と労働基準監督署への届出を義務付けています。
この10人には、正社員だけでなくパート・アルバイト、契約社員、休職者、出向者なども含まれます。ただし、出向者や派遣社員などについては、雇用関係によって取扱いが異なります。
例えば、従業員が15人いて、交代勤務のため毎日7人程度しか出勤していない場合でも、常時15人を雇用していれば就業規則の作成義務があります。
反対に、通常は8人しか雇用していない会社が、繁忙期の2週間だけ5人を追加雇用した場合、それだけで直ちに「常時10人以上」となるわけではありません。
期間の定めのある労働者を一時的に雇い入れて10人を超えても、その契約期間が満了すれば再び10人未満になるような場合は、常時10人以上には該当しないと考えられます。
ただし、短期雇用を繰り返し、実態として10人以上の体制が維持されている場合には、常時10人以上と判断される可能性があります。
なお、「何日以上10人になったら作成義務が生じる」という一律の日数基準はありません。 通常の雇用人数や人員の変動状況などから判断します。
従業員の雇用形態などによって、次のように判断します。
| 従業員の種類 | 常時10人以上への算入 |
|---|---|
| 正社員 | 含む |
| パート・アルバイト | 含む |
| 契約社員・嘱託社員 | 含む |
| 試用期間中の従業員 | 含む |
| 休職中の従業員 | 原則含む |
| 産前産後休業・育児休業中 | 含む |
| 日雇い・短期雇用 | 使用実態による |
| 在籍出向者 | 原則、出向元・出向先双方 |
| 移籍出向者(転籍者) | 移籍先で含む |
| 派遣社員(派遣元) | 派遣会社(派遣元)で含む |
| 派遣社員(派遣先) | 原則含まない |
| 管理監督者 | 含む |
| 代表取締役・事業主本人 | 含まない |
| 取締役 | 含まない |
| 労働者性がある取締役 | 含むこともある |
| 従業員兼務役員 | 労働者性があれば含む |
| 業務委託・請負契約の人 | 労働者性がない委託・請負なら含まない |
※一般的な判断を示したものです。出向者などは契約関係、日雇い労働者などは継続的な使用実態によって判断が異なります。
休職者や産前産後休業中や育児休業中の方も10人に含みます。
病気による休職、産前産後休業、育児休業、介護休業などで勤務していなくても、会社との雇用関係が続いていれば、原則として人数に含まれます。
例えば、正社員8人、パート1人、育児休業中の従業員1人の会社では、実際に勤務しているのは9人でも、雇用している従業員は10人となります。
無給の休職中であっても同様です。
また、休職者の代替として新たに従業員を雇った場合、休職者が退職したわけではないため、休職者と代替従業員の両方を人数に含めることになります。
重要なのは、雇用契約の期間だけではなく、事業場として通常どの程度の人数を使用しているかという点です。
例えば、通常8人の会社が、年に数日だけイベントのために日雇い労働者5人を雇う場合、その5人を加えて直ちに常時13人とは判断しません。
一方、毎日のように日雇い労働者を雇い、常態として合計10人以上が働く体制になっている場合は、常時10人以上に該当し得ます。
日雇いという雇用形態や契約期間の短さだけを理由に、人数から一律に除外することはできません。
①在籍出向の場合
在籍出向は、出向元の会社との雇用関係を維持したまま、別の会社へ出向する
形態です。
通常、出向元と出向先の双方に労働契約関係があるため、原則として双方の人数
に含めます。
例えば、出向元に通常の従業員9人と在籍出向中の従業員1人がいる場合、
その出向者が別会社で働いていても、出向元では10人として扱います。
また、出向先でも、出向者を含めて常時10人以上となるかを判断します。
ただし、具体的な出向契約や労働契約の関係は確認が必要です。
②移籍出向(転籍)の場合
移籍出向は、通常、出向元との雇用契約を終了し、移籍先との雇用契約に切
り替えるものです。
この場合は、退職しているわけですから、原則として移籍先の人数に含めま
す。
派遣社員は、派遣先で指揮命令を受けて働いていても、雇用契約を締結しているのは派遣元の会社だからです。
例えば、派遣先の会社に正社員7人、パート1人、派遣社員5人が勤務している場合、派遣先の就業規則作成義務を判断する人数は原則8人です。
一方、派遣会社(派遣元)では、派遣先で勤務している派遣社員も含めて判断します。
派遣労働者とそれ以外の労働者を合わせて常時10人以上使用する派遣元には、派遣労働者にも適用される就業規則の作成が必要であるとしています。
なお、労働安全衛生法では取扱いが異なることがあります。
例えば、安全衛生管理体制に関する事業場規模の算定では、派遣元・派遣先双方で派遣労働者を含めて判断する取扱いがあります。
就業規則の10人と、安全衛生管理者等の選任義務に関する人数を混同しないよう注意が必要です。
1人として数えます。
勤務時間が短くても、雇用されている労働者であることに変わりはありません。
例えば、正社員5人、週1日勤務のアルバイト5人を継続的に雇用している場合、通常の雇用人数は10人です。
1日の勤務時間が2時間しかないアルバイトでも1人として数えます。
勤務時間に応じて0.25人や0.5人などに換算する制度ではありません。
(8)店長や管理職、役員は10人に含む?
店長や管理職も、労働基準法上の労働者であれば含みます。
労働基準法第41条第2号の管理監督者に該当し、労働時間・休憩・休日の規制の適用が除外される人であっても、労働者であることに変わりはありません。
一方、代表取締役など、会社の役員として経営に従事し、労働者に該当しない人は人数に含めません。
ただし、取締役営業部長などの従業員兼務役員で、実態として労働者性が認められる場合は人数に含めます。
役職名や登記の有無だけではなく、実際の指揮命令関係や勤務実態による判断が必要です。
就業規則の作成義務は、原則として会社全体ではなく、事業場単位で判断します。
例えば、次の会社では、
本社:8人 A店舗:12人 B店舗:7人
それぞれが独立した事業場であれば、法律上の作成義務があるのはA店舗です。
ただし、注意したいのは、事業場は必ずしも店舗や営業所の名称だけで決まるわけではないことです。
場所的に分かれていても、1~2人程度の著しく小規模な営業所などで、組織や事務処理能力などから独立性がない場合は、直近上位の事業場と一体として取り扱われることがあります。
また、従業員が複数店舗を兼務している場合は、所属先や実際の労務管理の状況なども確認する必要があります。
法律上の作成・届出義務はありませんが、従業員が少ない会社でも就業規則を作成することをお勧めします。
例えば、無断欠勤を繰り返す従業員、業務命令に従わない従業員、職場秩序を乱す従業員がいた場合、就業規則に服務規律や懲戒処分について定めていなければ、会社として対応が難しくなることがあります。
反対に、就業規則があれば、従業員に求めるルールや違反した場合の対応をあらかじめ明確にできます。
もっとも、就業規則を作成すれば、どのような懲戒処分や解雇でも認められるわけではありません。処分の合理性や相当性なども必要です。
就業規則は、単に法律上の義務を果たすための書類ではなく、会社の人事労務管理を適切に行い、労務トラブルを防止するための重要なルールです。
そのため、10人未満の会社でも、実際の労働条件や経営方針に合った就業規則を作成しておくことが望ましいでしょう。
もくじへ戻る ー 就業規則Q&A 就業規則の疑問・盲点を社労士が徹底解説!ー
常時10人以上の従業員がいる事業場では、就業規則を作成しただけで手続が終わるわけではありません。
基本的には、次の流れで手続を進めます。
(1)就業規則を作成する
まず、会社の労働条件や職場のルールに合わせて就業規則を作成します。
法律に違反していなければ、会社独自のルールを定めることもできます。
ただし、厚生労働省のモデル就業規則をそのまま使用すると、実際の労働条件と規定が食い違うことがあるため注意が必要です。
(2)従業員代表の意見を聴く
就業規則を作成したら、従業員の過半数を代表する者などから意見を聴く必要があります。過半数を組織する労働組合がない場合、従業員代表は、投票や挙手などの方法で適正に選出しなければなりません。
会社が勝手に代表者を指名することは認められません。
なお、法律上必要なのは意見を聴くことであり、従業員代表の同意を得ることではありません。意見を聴くことが求められているので、反対意見であっても問題ありません。
(3)労働基準監督署へ届け出る
届出には、基本的に次の3つを用意します。
①就業規則(賃金規程などの別規程を含む)
②就業規則(変更)届
③従業員代表等の意見書
これらを、事業場を管轄する労働基準監督署へ提出します。電子申請も可能です。
(4)従業員に周知する
就業規則は、届け出るだけでなく、従業員がいつでも確認できる状態にしておく必要があります。
例えば、従業員への書面の配布、職場への備付け、常時閲覧できる社内システムへの掲載などです。
当然、職場へ備え付けてもそれを全従業員に知らせたり、新入社員や新規採用者に伝えないと周知したことにはなりません。
労働条件通知書や雇用契約書や入社書類に就業規則の保管場所を記載しておくのがよいでしょう。
注意したいのは、労働基準監督署に届け出たからといって、就業規則の内容がすべて適法と認められたわけではないことです。
また、従業員に周知していなければ、就業規則の効力が問題になる場合があります。就業規則は、作成・意見聴取・届出・周知まで適切に行うことが重要です。
就業規則を作成・変更するときは、従業員代表の意見を聴かなければなりません。
しかし、法律で義務付けられているのは「意見を聴くこと」であって、「同意を得ること」ではありません。
そのため、従業員代表が反対しても、会社は就業規則を作成・変更し、労働基準監督署へ届け出ることができます。
(1)反対意見が書かれた意見書でも問題ない?
例えば、従業員代表が意見書に、
「今回の就業規則の変更には反対です」
「新しく設ける懲戒処分の規定には納得できません」
と記載した場合でも、その意見書を添付して届け出ることができます。
また、従業員代表の反対意見に従って、就業規則の内容を修正する法的義務もありません。
就業規則の作成・変更を決定する権限は、基本的に会社にあります。
(2)従業員代表が意見書を書いてくれない場合は?
従業員代表が反対するだけでなく、意見書の提出自体を拒否することも考えられます。
この場合でも、会社が適切に意見を聴く機会を設けたことを客観的に証明できれば、意見書がなくても届出が受理される取扱いがあります。
ただし、会社が一方的に意見聴取を省略してよいという意味ではありません。
就業規則案を渡した日、意見を求めた日、回答を求めた経緯、提出を拒否された状況などを記録し、所轄の労働基準監督署に確認することが望ましいでしょう。
(3)反対されても、すべての変更が有効になる?
ここは注意が必要です。
従業員代表が反対していても、就業規則の変更手続を進めることはできます。
しかし、給与の減額や退職金制度の廃止など、従業員に不利益となる変更については、別の問題があります。
労働契約法では、従業員に不利益な労働条件の変更について、原則として合意が必要とされています。
例外的に、変更内容の合理性などの要件を満たせば、同意のない従業員にも変更後の就業規則が適用される場合があります。
つまり、「従業員代表の同意が不要」ということと、「会社が自由に労働条件を不利益変更できる」ということは別です。
会社としては、反対意見があっても必要な規則を制定することは可能ですが、その内容が法律に違反していないか、不利益変更に当たらないかを確認しておく必要があります。
就業規則は、会社が施行日を自由に設定できるものの、記載された施行日に必ず効力が発生するとは限りません。
就業規則の効力発生には従業員への周知が重要であり、施行日を過去に設定しただけでは、それ以前から就業規則が有効だったことにはなりません。
ただし、従業員に有利な変更か、不利益な変更かによって取扱いは異なります。
(1)従業員に有利な変更は、さかのぼって適用できる?
例えば、10月1日に就業規則を改定し、次のように定めた場合です。
「慶弔休暇を3日から5日に増やし、9月1日以降の取得分から適用する」
「住宅手当を月額1万円から1万5,000円に増額し、4月分の給与から適用する」
このように、会社が従業員に有利な取扱いを過去にさかのぼって認めることは可能です。
ただし、就業規則自体が過去に効力を生じていたという意味ではありません。
会社が新しい規程によって、過去の一定期間についても有利な取扱いを認めるということです。
また、有利な変更であっても、従業員ごとに取扱いが異なる場合や、過去に支給した手当などとの調整が必要になる場合は、対象者や適用条件を明確にしておく必要があります。
例えば、10月1日に就業規則を変更し、次のように定めた場合です。
「9月1日から役職手当を月額3万円から1万円に減額する」
「9月1日から退職金の支給率を引き下げる」
このような不利益変更について、単に施行日を9月1日に設定しただけでは、過去の労働条件を変更することはできません。
労働契約法第9条では、原則として、従業員との合意なく労働条件を不利益に変更することはできないとしています。
例外的に、同法第10条の要件を満たす合理的な就業規則変更であれば、個別同意がなくても将来に向けて労働条件を変更できる場合があります。
しかし、変更後の就業規則を周知する前に、既に発生している賃金請求権などを、一方的に消滅・減額させることはできません。
過去の権利について個別に清算・変更する場合には、就業規則の不利益変更とは別の法的検討が必要です。
こちらも注意が必要です。
例えば、従業員が9月10日に問題行動を起こし、会社が9月20日に新しい懲戒規定を制定した場合です。
9月10日の時点で懲戒の根拠となる規定がなかったにもかかわらず、新しい規定をさかのぼって適用し、懲戒処分を行うことは原則として認められません。
懲戒処分を行うには、問題行動があった時点で、その行為を対象とする懲戒規定が定められ、従業員に周知されていることが必要です。
このため、過去の問題行動に対応する目的で、後から懲戒規定を追加しても、その規定を過去の行為に適用することはできません。
就業規則を過去にさかのぼって適用したい場合は、次のように整理できます。
| 変更内容 | 遡及適用の考え方 |
|---|---|
| 手当の増額 | 過去の期間にも増額分を支給することは可能 |
| 特別休暇の増加 | 過去の取得分にも有利な取扱いを認めることは可能 |
| 基本給の減額 | 既に発生した賃金を一方的に減額することはできない |
| 退職金の減額 | 既得の権利や不利益変更の合理性などを慎重に検討 |
| 懲戒事由の追加 | 新規定を過去の行為にさかのぼって適用することは原則不可 |
会社としては、過去にさかのぼる取扱いする場合、対象期間、対象者、支給条件などを明確に定めることが望ましいでしょう。
労働基準法第90条では、就業規則の作成・変更について、従業員の過半数代表等の意見を聴くことを義務付けています。
しかし、意見書に記載された日付が施行日より後だからといって、就業規則が当然に無効になるわけではありません。
例えば、次のようなケースです。
8月25日:従業員代表に就業規則案を提示
8月28日:従業員代表から意見を聴取
9月1日:就業規則の施行日
9月5日:従業員代表が意見書を作成
この場合、実際の意見聴取は8月28日に行われています。
意見書の作成日が9月5日だからといって、意見聴取まで9月5日に行われたとは限りません。
重要なのは、書類の日付だけではなく、実際にいつ、どのような意見聴取を行ったかです。
ただし、意見書が後日作成されたことを理由に、労基署への届出まで遅れてよいわけではありません。
(2)施行日より後に初めて意見を聴いた場合
例えば、9月1日に就業規則を施行したものの、意見聴取を忘れており、9月5日になって初めて従業員代表の意見を聴いた場合です。
この場合は、労働基準法第90条の意見聴取手続に問題があります。
もっとも、手続に問題があることと、就業規則の民事上の効力が当然に失われることは別問題です。
厚生労働省の平成24年8月10日付通達「労働契約法の施行について」(基発0810第2号、後に一部改正)では、就業規則の変更による労働条件変更について、労働基準法第89条・第90条の手続は労働契約法第10条の法的効果を生じさせる直接の要件ではないと説明しています。
したがって、意見聴取が施行日より後になったことだけを理由に、就業規則が当然に無効になるわけではありません。
ただし、不利益変更の場合には、意見聴取などの手続を適切に行ったかどうかが、変更の合理性を判断する際に考慮される可能性があります。
(3)意見書の日付を施行日前に変更してもよい?
実際には9月5日に意見を聴いたのに、8月31日に意見を聴いたことにするような、事実と異なる記載をしてはいけません。
後から意見を聴いたのであれば、実際の日付と経緯を正確に記録しておくべきです。
また、形式的に意見書をもらうだけでなく、従業員代表に就業規則の内容を確認してもらい、意見を述べる機会を設ける必要があります。
(4)会社側の実務上の注意点
意見聴取が遅れた場合には、まず適正に選出された従業員代表から速やかに意見を聴き、実際の経緯を記録しておくことが重要です。
従業員への周知が既に行われている場合には、その日時や方法についても記録を残しておきましょう。
また、意見聴取後に規則の内容を大きく変更した場合は、変更後の内容について改めて意見を聴く必要性も検討しなければなりません。
意見書の日付と施行日の前後関係だけで、就業規則の有効・無効を判断しないことが重要です。
就業規則を作成・変更する際、施行日、従業員への周知日、従業員代表の意見聴取日、労働基準監督署への届出日が異なることがあります。
この場合、いつから就業規則が有効になるのでしょうか。
| 項目 | 日付 |
|---|---|
| 従業員代表に就業規則案を提示 | 8月25日 |
| 従業員代表から意見を聴取 | 8月28日 |
| 就業規則に記載された施行日 | 9月1日 |
| 従業員への周知 | 9月2日 |
| 従業員代表が意見書を作成 | 9月5日 |
| 労働基準監督署への届出 | 9月10日 |
この場合、就業規則は、原則として9月2日の周知後から効力が生じます。
就業規則に施行日を9月1日と記載していても、従業員への周知が9月2日であれば、原則として9月1日にさかのぼって効力が生じるわけではありません。
厚生労働省も、就業規則の効力発生時期は、従業員に周知された時期以降であると説明しています。
また、従業員代表からの意見聴取は8月28日に行われているため、意見書の作成日が9月5日であっても、それだけで就業規則が無効になるわけではありません。
さらに、労働基準監督署への届出が9月10日であっても、その日まで就業規則の効力が生じないわけではありません。
ただし、民事上の効力が認められる場合でも、意見書の取得や届出などの法定手続は適切に行う必要があります。
なお、従業員に不利益となる変更については、周知だけでなく、労働契約法第10条に定める合理性などの要件も満たす必要があります。
それでは、Q5のもう一つの事例のように、9月5日になって初めて従業員代表の意見を聴いた場合はどうでしょうか。
この場合、就業規則の作成・変更に際して事前に意見を聴くという労働基準法第90条の手続に問題があります。
しかし、意見聴取が遅れたことだけを理由に、9月2日に周知された就業規則が当然に無効になるわけではありません。
厚生労働省の平成24年8月10日付通達(基発0810第2号、後に一部改正)では、労働基準法第89条・第90条の届出・意見聴取手続は、労働契約法第10条による労働条件変更の効力発生の直接の要件ではないとしています。
ただし、従業員に不利益となる変更の場合は、法定手続を適切に行ったかどうかが、変更の合理性の判断に影響する可能性があります。
したがって、意見聴取が遅れた場合は、就業規則の民事上の効力と、労働基準法上の手続の問題を分けて判断する必要があります。
| 項目 | 日付 |
|---|---|
| 従業員代表に就業規則案を提示 | 8月20日 |
| 従業員代表から意見を聴取 | 8月22日 |
| 従業員への周知 | 8月25日 |
| 労働基準監督署への届出 | 8月28日 |
| 就業規則に記載された施行日 | 9月1日 |
この場合、原則として9月1日から効力が生じます。
従業員に周知した8月25日からではありません。
周知は、就業規則の効力発生に必要な要件ですが、会社が将来の施行日を定めている場合には、原則としてその施行日から適用されます。
就業規則に施行日を定めていない場合は、通常、従業員に周知された日から効力が生じると解されています。
ただし、就業規則の内容などによって個別の判断が必要になることがあります。
そのため、会社としては、いつから適用する規則なのかを明確にするため、施行日を定めておくことが望ましいでしょう。
就業規則の効力を判断する場合、施行日、周知日、意見聴取日、届出日を混同しないことが重要です。
| 項目 | 法律上の位置付け |
|---|---|
| 施行日 | 会社が定める規則の適用開始日 |
| 周知日 | 就業規則の効力発生に重要な日 |
| 意見聴取日 | 労働基準法第90条の法定手続 |
| 届出日 | 労働基準法第89条の法定手続 |
就業規則を適切に運用するためには、施行前に従業員代表の意見を聴き、従業員への周知を済ませたうえで、労働基準監督署への届出も適切に行うことが望ましいでしょう。
特に、就業規則の効力が発生することと、法律上必要な手続をすべて適正に行っていることは、別の問題であるという点に注意が必要です。
労働基準法第106条では、就業規則を従業員に周知することを義務付けています。
ただし、従業員一人ひとりに紙の就業規則を配布しなければならないわけではありません。
②就業規則を書面で従業員に交付する。
③就業規則を電子データで保存し、各作業場で従業員が常時確認できる機器を
設置する。
したがって、例えば、従業員が自由に確認できる場所に就業規則のファイルを備え付ける方法でも構いません。
また、従業員が常時閲覧できる社内システムなどを利用する方法もあります。
平成9年10月20日付の労働省通達(基発第680号)では、就業規則を電子機器で周知する場合について、次の要件を示しています。
①各労働者に、電子機器から就業規則のデータを取り出すための操作権限が
与えられていること。
②各労働者に、必要なときに容易に確認できるよう、データの取り出し方が
周知されていること。
そのうえで、事業場内の電子機器から必要なときに容易に確認できる場合、労働基準法上の周知義務を満たすものとして取り扱うとしています。
つまり、単にパソコンに就業規則を保存してあるだけではなく、従業員が実際にアクセスでき、確認方法を知っていることが重要です。
就業規則が適切に周知されているのであれば、従業員が実際に読んでいなくても、原則として周知の要件を満たします。
平成24年8月10日付通達(基発0810第2号)でも、従業員が就業規則の存在や内容を知ろうと思えば、いつでも知り得る状態にあれば、実際に知っているかどうかは問わないと説明しています。
例えば、会社が就業規則の閲覧場所を従業員に知らせ、いつでも確認できるようにしている場合です。
従業員が「私は就業規則を一度も読んだことがない」と主張しても、それだけで周知が否定されるわけではありません。
就業規則の「周知」は、労働基準法と労働契約法で判断基準が異なります。
労働基準法では、法律で定められた方法による周知が必要ですが、労働契約法では、その方法によらなくても、従業員が就業規則を確認できる状態であれば、周知が認められる場合があります。
結論から言えば、以下の表の①②③労働基準法上の周知をすれば、周知が認められると思っていただければ大丈夫です。
| 周知方法 | 労働基準法 | 労働契約法 |
|---|---|---|
| ①各作業場に常時備付け | 原則認められる | 原則認められる |
| ②全従業員に書面交付 | 認められる | 認められる |
| ③各作業場で閲覧できる パソコンを設置 | 必要な時に見られる | 原則認められる |
| 全従業員にPDFを メール送信 | メールを送っただけ | 認められる場合がある |
| 各自のスマートフォン でクラウド閲覧 | 各自のスマホだけでは | 認められる場合がある |
| 管理職しか閲覧できない | 原則認められない | 原則認められない |
| 朝礼で変更内容の一部だけ説明 | 原則認められない | 不十分と判断される 可能性が高い |
労働基準法第106条では、各作業場への掲示・備付け、書面の交付、電子機器による閲覧など、法律で定められた方法による周知を義務付けています。
一方、労働契約法では、こうした方法に限定せず、従業員が知ろうと思えば、いつでも就業規則の内容を確認できる状態にあったかどうかで判断します。これを「実質的周知」といいます。
①具体的に何が違う?
例えば、会社に複数の作業場があり、就業規則を各作業場には備え付けず、全従業員が利用する食堂に1冊だけ備え付けていた場合です。
労働基準法では、各作業場への備付けなどが求められているため、周知方法に問題がある可能性があります。
しかし、食堂にある就業規則を全従業員がいつでも自由に確認できる状態であれば、労働契約法上の実質的周知が認められる場合があります。
これは厚生労働省も具体例として挙げている取扱いです。
②この違いは、会社にとってなぜ重要?
例えば、会社が就業規則の周知方法に不備があったことを理由に、従業員から「この就業規則は無効なので、懲戒処分には従いません」と主張された場合です。
労働基準法で定められた方法による周知ができていなくても、実質的周知が認められれば、周知方法の不備だけを理由に就業規則の効力が否定されるわけではありません。
したがって、会社は、法律で定められた周知方法に不備があっても、実際には従業員が就業規則を確認できる状態だったことを根拠に、その効力を主張できる場合があります。
ただし、懲戒処分や不利益変更が有効になるには、周知以外の法律上の要件も満たす必要があります。
また、実質的周知が認められたとしても、労働基準法上の周知義務違反が解消されるわけではなく、行政指導や罰則の対象となる可能性は残ります。
③会社側の実務上の注意点
就業規則の周知方法に不備があった場合でも、直ちに就業規則が無効になると判断する必要はありません。
まず、従業員が実際に就業規則の内容を確認できる状態だったかを確認することが重要です。
一方、従業員が就業規則の保存場所を知らなかったり、閲覧するには上司の許可が必要だったりする場合には、実質的周知も認められない可能性があります。
会社としては、法律で定められた周知方法を守ることを基本としつつ、周知方法に問題があった場合には、実質的周知が認められるかを別途検討することが重要です。
就業規則の周知は、正社員だけに行えばよいわけではありません。
就業規則の適用を受けるパート・アルバイトなどについても、閲覧できる状態にしておく必要があります。
例えば、正社員は社内パソコンを使えるものの、アルバイトはパソコンを使う権限がない場合、電子データで保存しているだけでは周知が不十分となるおそれがあります。
また、休職者や育児休業中の従業員が、会社に出勤しなければ就業規則を確認できない場合も、実際の閲覧環境に注意が必要です。
休職者への周知方法について法律が一律に個別郵送を義務付けているわけではありませんが、会社としては必要に応じて電子データの提供などを検討するとよいでしょう。
就業規則の周知は、会社が必要な手続を実施したかだけでなく、後日トラブルになった際に、その事実を証明できることも重要です。
例えば、就業規則の閲覧場所を知らせた社内通知、電子メールの送信履歴、共有システムへの掲載記録などを保管しておく方法が考えられます。
これらの記録を保管すること自体が法律で一律に義務付けられているわけではありませんが、会社側の証拠として役立ちます。
近年は、就業規則を紙で配布せず、社内の共有フォルダやクラウド上に保存する会社も増えています。
この方法も周知の手段として利用できますが、実際の運用状況によっては問題になる場合があります。
この場合、従業員が就業規則の存在や内容を知ろうと思っても、確認できない可能性があります。
平成9年10月20日付通達(基発第680号)では、電子機器による周知について、従業員に操作権限があることと、データを取り出す方法が周知されていることを求めています。
したがって、会社としては、就業規則の保存場所と閲覧方法を従業員に知らせておく必要があります。
このような運用では、従業員が必要なときに自由に閲覧できる状態とはいえない可能性があります。
就業規則の周知については、従業員が実際に内容を知ることができる状態にあることが重要です。
そのため、会社としては、閲覧に特別な許可を必要としない仕組みにしておくことが望ましいでしょう。
なお、閲覧は認めつつ、内容の変更や削除を防ぐために編集権限を制限することは問題ありません。
「閲覧制限」と「編集制限」は別の問題です。
従業員が内容を確認できる状態であれば、閲覧専用の設定とすることも考えられます。
そのため、会社が就業規則の持ち出しや無断改変を防ぐ目的で、編集やダウンロードを制限すること自体が、直ちに違法になるわけではありません。
ただし、画面上で一部分しか表示されないなど、規則全体を容易に確認できない状態であれば、周知として不十分となる可能性があります。
例えば、共有フォルダに次のファイルが保存されている場合です。
「就業規則2024年版」
「就業規則2025年改定案」
「就業規則2026年最新版」
これらが整理されておらず、どれが現在有効な就業規則なのか分からない状態では、実務上の問題が生じます。
特に、古い就業規則と新しい就業規則で懲戒規定や退職金の取扱いが異なる場合、後日どの規則が適用されるのか争いになる可能性があります。
会社としては、現在有効な就業規則を明確にし、旧規程や改定案とは保存場所を分けておくことが望ましいでしょう。
労働トラブルでは、会社が「共有フォルダに保存していた」と主張しても、従業員が「そんなフォルダは知らなかった」と反論することがあります。
そのため、会社としては次のような資料を残しておくことが考えられます。
①就業規則の保存場所を知らせた社内通知
②従業員に送信した電子メール
③フォルダの閲覧権限を確認できる資料
④就業規則を掲載・更新した日時の記録
⑤施行日と改定履歴を明示した就業規則の原本
これらをすべて法律上作成・保管しなければならないわけではありません。
しかし、会社が就業規則を適切に周知していたことを証明する資料として有用です。
就業規則を作成・変更するとき、従業員全員を集めて説明会を開かなければならないと考えている経営者もいます。
しかし、労働基準法では、就業規則の説明会を開催することまでは義務付けていません。
就業規則について法律上必要なのは、従業員代表等の意見聴取、労働基準監督署への届出、従業員への周知などです。
説明会の開催自体は、原則として法定義務ではありません。
したがって、書面の配布や適切な電子データによる周知などによって法律上の要件を満たしていれば、説明会を開催しないことだけを理由に就業規則が無効になるわけではありません。
ただし、会社の就業規則や労働協約などで独自に説明・協議の手続を定めている場合は、その内容を確認する必要があります。
例えば、説明会で就業規則の概要だけを口頭で説明し、就業規則の全文を従業員が確認できない状態であれば、周知として不十分となる場合があります。
反対に、説明会を開催しなくても、従業員が必要なときに就業規則を確認できる状態にしていれば、周知の要件を満たし得ます。
つまり、説明会の開催と、法律上の周知は同じものではありません。
適切な周知が行われていれば、説明会に参加していないという理由だけで、その従業員に就業規則が適用されなくなるわけではありません。
就業規則の適用について、全従業員が説明会に出席することは法律上の必須条件ではありません。
ただし、説明会に参加できなかった従業員も、就業規則の内容を確認できる状態にしておく必要があります。
就業規則の作成・変更について、原則として従業員全員の同意を得る義務はありません。
労働基準法第90条で求められているのは、従業員代表等の意見を聴くことです。
ただし、賃金の引下げや退職金制度の不利益変更などについては、労働契約法第9条・第10条の『不利益変更』の問題があります。
従業員にとって不利益な変更は、原則として個別合意が必要ですが、変更内容に合理性が認められるなどの要件を満たす場合には、個別同意がなくても変更できることがあります。
したがって、就業規則を変更するたびに全従業員から同意書を取得しなければならないわけではありません。
不利益変更に関しては、同意書をもらっていても、変更が不合理だ、合理的ではないと判断される可能性もあるので注意が必要です。
最高裁判所は、山梨県民信用組合事件(平成28年2月19日第二小法廷判決)において、労働条件の不利益変更に対する従業員の同意について、慎重に判断すべきことを示しています。
従業員が同意書に署名したという事実だけではなく、変更内容や不利益の程度などに照らし、自由な意思に基づく同意と認められるかが問題になります。
したがって、会社が説明会で署名を集めたとしても、それだけですべての不利益変更が有効になるわけではありません。
一方、法律上の要件を満たす合理的な就業規則変更についてまで、必ず個別の同意書を取得しなければならないということでもありません。
※不利益変更は「Q11:一度作った就業規則を、従業員に不利な内容に変更できる? 就業規則の不利益変更とは?」もご参考ください。
説明会を開催するかどうかは、就業規則の内容や変更の重要性によって判断するとよいでしょう。
例えば、服務規律の軽微な見直しと、賃金体系の大幅な変更とでは、必要な説明の程度は異なります。
会社としては、説明会の開催を形式的な義務と考えるのではなく、従業員への周知、労働条件変更の合理性、労務トラブルの防止などを考慮して判断することが重要です。
会社の経営状況や事業内容の変化に伴い、賃金、手当、退職金、休日などの労働条件を見直さなければならないことがあります。
一度作成した就業規則であっても変更することは可能ですが、従業員に不利益な変更については、労働契約法による制限があります。
ただし、同法第10条では、変更後の就業規則を周知し、変更内容が合理的である場合には、従業員の個別同意がなくても変更後の労働条件を適用できると定めています。
つまり、会社には大きく分けて2つの方法があります。
①従業員と個別に合意して労働条件を変更する方法
②労働契約法10条の要件を満たす就業規則変更によって労働条件を変更する方法
従業員が反対しているからといって、会社が就業規則を変更できないわけではありません。
| 判断事項 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 従業員が受ける不利益の程度 | 減給額、対象人数、生活への影響など |
| 労働条件を変更する必要性 | 経営状況、制度の問題点、事業上の必要性など |
| 変更内容の相当性 | 新制度の内容、代償措置、経過措置など |
| 労働組合等との交渉状況 | 説明や協議の経緯、従業員側の意見など |
| その他の事情 | 制度変更の経緯や具体的な事情 |
これらを総合的に判断します。
例えば、業績が悪化したという理由だけで、大幅な減給が必ず認められるわけではありません。
一方、経営上の必要性が高く、減額幅が抑えられ、経過措置なども設けられている場合は、合理性が認められる方向に働くと考えられます。
例えば、次のような場合です。
①基本給や各種手当を引き下げる。
②退職金の支給率を引き下げる。
③所定労働時間や所定労働日数を増やす。
④有給の特別休暇を廃止する。
⑤これまで支給していた賞与の支給条件を厳しくする。
ただし、実際に不利益変更に該当するかどうかは、変更前の制度内容や個別の労働契約によって異なります。
例えば、支給額が確定していない賞与と、毎月定額で支給される手当では、法律上の検討事項も異なります。
労働基準法第90条で求められているのは、従業員代表等の意見聴取です。
従業員代表の賛成意見は、変更の合理性を判断する際の事情の一つになり得ますが、それだけで変更の有効性が決まるわけではありません。
また、従業員代表の意見書に「同意する」と記載されていても、通常、それだけで個々の従業員が労働条件の変更に同意したことにはなりません。
なお、労働組合との間で労働協約を締結する場合は、別の法的効果が生じることがあります。
山梨県民信用組合事件(最高裁平成28年2月19日判決)では、賃金・退職金の不利益変更に対する同意について、従業員の自由な意思に基づくものかを慎重に判断する必要があるとしています。
そのため、同意を得る場合は、不利益の内容や程度、変更の必要性などを説明し、従業員が判断できるようにすることが重要です。
一方で、労働契約法第10条の要件を満たす合理的な就業規則変更であれば、すべての従業員から個別に同意書を取得する必要はありません。
不利益変更を検討する際は、変更内容によって対応を分けることが重要です。
例えば、基本給の大幅な引下げなど、不利益が大きい場合は、変更の必要性や代償措置を十分検討する必要があります。
反対に、不利益が限定的な制度変更についてまで、必ず全従業員の個別同意を取得しなければならないわけではありません。
また、労働契約法第10条には、就業規則変更によっては変更されない労働条件として個別合意していた部分についての例外があります。
そのため、会社としては、就業規則だけでなく、雇用契約書や過去の個別合意の内容も確認しておく必要があります。
就業規則の不利益変更では、従業員の同意の有無だけでなく、変更内容の合理性と周知、個別契約との関係が重要です。
就業規則を変更する場合、労働基準監督署へ変更届を提出する必要があります。
ただし、変更していない部分も含め、就業規則全文を毎回届け出なければならないわけではありません。
例えば、就業規則の第20条「休職期間」だけを変更する場合です。
この場合、変更した第20条の内容を明示して届け出ればよく、変更していない第1条から第19条、第21条以降まで、すべて提出する必要はありません。
ただし、変更箇所だけを届け出ると、労働基準監督署に提出した書類が、以前の就業規則と変更部分に分かれるため、後から規則全体の内容を確認しにくくなります。
そのため、変更内容を反映した就業規則全文を届け出る方法もあります。
なお、変更部分だけを届け出た場合でも、会社で保管・周知する就業規則は、変更内容を反映した最新版に更新しておく必要があります。
①就業規則本則
②賃金規程
③退職金規程
④育児介護休業規程
このうち賃金規程だけを変更したのであれば、原則として変更した賃金規程の届出で足ります。
変更していない就業規則本則、退職金規程、育児介護休業規程をすべて再提出する必要はありません。
なお、変更部分が少ない場合は、賃金規程全文ではなく、変更箇所を明示した書類で対応する方法もあります。
本則の記載内容に変更がなければ、通常、本則を再提出する必要はありません。
一方、就業規則本則にも退職金額や支給条件を具体的に定めており、別規程の変更とともに本則の修正も必要になる場合は、双方の変更部分を届け出ます。
重要なのは、どの規程を変更したかだけでなく、他の規程との整合性が保たれているかという点です。
また、新旧対照表による届出や、変更した別規程だけの提出も認めています。
例えば、変更条文が1条だけで、変更届の欄に内容を明確に記載できる場合などが考えられます。
ただし、複雑な変更については、別紙に変更内容を記載した方が明確になります。
例えば、労働基準監督署へ変更条文だけを届け出ても、社内で周知している就業規則が旧版のままであれば、従業員が変更内容を確認できません。
また、変更した規程と変更していない規程で条番号や参照先が食い違うこともあります。
そのため、変更届は必要部分に限定しながら、社内では規程全体の整合性を確認し、最新版を管理することが望ましいでしょう。
就業規則を変更する際、変更前と変更後の内容を左右に並べた「新旧対照表」を作成することがあります。
ただし、労働基準法では、新旧対照表という書式で届け出ることまでは義務付けていません。
労働基準監督署への代表的な届け出方法として、次のようなものがあります。
| 届出方法 | 取扱い |
|---|---|
| 新旧対照表を提出 | 可能 |
| 変更した条文だけ提出 | 可能 |
| 変更後の就業規則全文を提出 | 可能 |
| 変更した賃金規程などの別規程だけ提出 | 可能 |
| 変更届の欄に変更内容をすべて記載 | 記載できる場合は可能 |
なお、どの方法でも、労働基準法第90条に基づく従業員代表等の意見書は原則として必要です。
| 変更前 | 変更後 |
|---|---|
| 第20条 私傷病による休職期間は3か月とする。 | 第20条 私傷病による休職期間は6か月とする。 |
このような新旧対照表があれば、どこを変更したのか一目でわかります。
特に、複数の条文を変更する場合や、従業員代表へ変更内容を説明する場合には便利です。
ただし、新旧対照表を作成したからといって、変更の合理性や就業規則の有効性が保証されるわけではありません。
例えば、賃金規程を全面的に見直した場合、変更後の賃金規程全文を届け出る方法も考えられます。
法律上、新旧対照表を必ず添付しなければならないわけではありません。
ただし、全面改定の場合には、従業員代表が変更内容を確認できるようにする必要があります。
また、変更箇所が分かりにくい場合には、社内の説明資料として新旧対照表を作成することも有効です。
例えば、「第20条を変更」「休職期間を延長」などの説明だけでは、変更後の条文が明らかになりません。
変更後の規定内容を具体的に示す必要があります。
特に、条文番号の変更、他の条文からの参照、適用対象者、経過措置などがある場合は、新旧対照表だけでは確認しきれないこともあります。
会社としては、届出書類を簡素化することと、就業規則の内容を正確に管理することを分けて考える必要があります。
就業規則を作成する際、正社員、パート・アルバイト、契約社員などの規則を分けたり、賃金や退職金について別規程を作成したりすることがあります。
しかし、これらを必ず別々に作成しなければならないわけではありません。
正社員とパート・アルバイトの労働条件を、1つの就業規則にまとめて定めることも可能です。
例えば、就業規則の中に「第2章 正社員の労働条件」「第3章 パートタイマーの労働条件」と区分して定める方法もあります。
ただし、正社員とパート・アルバイトで労働時間、休日、賃金、賞与、退職金などの取扱いが大きく異なる場合は、別規程にした方がわかりやすくなります。
ここは注意が必要です。
例えば、就業規則に「従業員には退職金を支給する」と定めており、パート・アルバイトを適用対象から除外する規定がない場合です。
この場合、規則全体の内容や運用実態などによっては、パート・アルバイトにも退職金規定が適用されると解釈される可能性があります。
同様に、賞与、休職制度、特別休暇なども問題になることがあります。
別規程を作ること自体よりも、それぞれの規程が誰に適用されるのかを明確にすることが重要です。
また、別規程にしたからといって、正社員とパート・有期雇用労働者の待遇差がすべて認められるわけではありません。
そのため、本則から分離しておくことで、変更部分を整理しやすくなります。
例えば、賃金規程については、変更する頻度が高いので、別規程にしている会社もあります。
ただし、別規程にしたからといって、会社が自由に賃金や退職金を不利益変更できるわけではありません。
賃金規程や退職金規程も、就業規則の一部として労働基準法や労働契約法の適用を受けます。
例えば、本則には「退職金は勤続3年以上で支給する」と記載されているのに、退職金規程では「勤続5年以上」となっている場合です。
このような不整合があると、どちらの規定が適用されるか問題になります。
会社としては、別規程を作成する場合、適用対象、本則との優先関係、条文の参照先などを明確にしておくことが重要です。
会社によっては、職務等級、能力等級、号俸などに応じて給与額を定める賃金テーブルを使用しています。
このような表を就業規則や賃金規程に掲載する必要があるかは、表の役割によって判断が異なります。
| 等級 | 1号俸 | 2号俸 | 3号俸 |
|---|---|---|---|
| 1等級 | 200,000円 | 205,000円 | 210,000円 |
| 2等級 | 220,000円 | 225,000円 | 230,000円 |
| 3等級 | 250,000円 | 255,000円 | 260,000円 |
賃金規程に「基本給は、別表の賃金テーブルに定める額とする」と記載している場合、この表は基本給の決定に直接使用されます。
このような場合、賃金テーブルは賃金決定の基準を構成するため、就業規則の一部として取り扱う必要があると考えられます。
そのため、常時10人以上の事業場では、届出・周知の対象となることに注意が必要です。
例えば、次のような表です。
| 等級 | 求められる能力・役割 |
|---|---|
| 1等級 | 上司の指示を受けて定型業務を遂行 |
| 2等級 | 担当業務を独力で遂行 |
| 3等級 | 部下の指導や業務改善を担当 |
この表だけでは、具体的な基本給の額は決まりません。
そのため、能力や役割を説明するための資料である場合と、給与や昇格の決定基準として使用する場合とでは、取扱いが異なります。
単なる人事評価上の参考資料であれば、必ずしも表そのものを就業規則に掲載する必要はありません。
一方、給与決定のルールと一体になっている場合は、賃金規程との関係を確認する必要があります。
賃金テーブルを就業規則の一部として定め、従業員に周知すると、その内容が労働契約上の労働条件となる場合があります。
この場合、会社が賃金テーブルを変更しようとすると、就業規則の変更や労働条件の不利益変更の問題が生じることがあります。
例えば、2等級3号俸を230,000円から210,000円に引き下げる場合です。
その表によって基本給が決まる制度であれば、単なる社内資料の修正ではなく、労働条件の変更として検討する必要があります。
ただし、賃金テーブルを掲載しなければ不利益変更の問題が生じないというわけではありません。
給与の決定方法や個別の労働契約、実際の運用などから、労働条件が確定している場合があるためです。
就業規則や給与規程に、基本給や各種手当の具体的な金額をすべて記載する必要はありません。
労働基準法第89条では、賃金の決定・計算・支払方法などを就業規則に定めることを義務付けていますが、従業員一人ひとりの給与額まで記載することは求めていません。
例えば、基本給について、次のように定めることも可能です。
「基本給は、本人の職務内容、能力、経験、勤務成績等を考慮して、各人別に決定する。」
この規定は、厚生労働省のモデル就業規則でも採用されている方法です。
また、役職手当や職務手当などについても、具体的な金額を一律に記載せず、決定方法を定めることができます。
例えば、次のような規定です。
「役職手当は、管理職等の役職にある従業員に対し、その役職、職責、職務内容等を考慮して個別に決定する。」
ただし、具体的な金額を記載しなくてもよいからといって、賃金の決定方法まで省略できるわけではありません。
例えば、「会社が必要と認めた場合に手当を支給する」とだけ定めても、手当の対象者や決定方法が不明確であれば、就業規則の記載として不十分となる可能性があります。
また、就業規則に金額を記載しない場合でも、個々の従業員に適用される給与額や手当額については、労働条件通知書などで明示する必要があります。
なお、会社が給与額を個別に決定する制度であっても、既に決定した給与を自由に引き下げられるわけではありません。賃金を不利益に変更する場合は、労働契約法に基づく判断が必要です。
賃金制度を設計する場合は、等級表を次のように区別するとよいでしょう。
| 資料の種類 | 就業規則との関係 |
|---|---|
| 給与額を直接定める賃金テーブル | 賃金規程の一部となる可能性が高い |
| 昇格・昇給額を決定する表 | 賃金決定基準として検討が必要 |
| 職務・能力等級の説明表 | 使用目的や規程との関係による |
| 人事評価者向けの参考資料 | 直ちに就業規則の一部になるとは限らない |
会社としては、給与額を確定するルールと、経営上の判断資料として使用するものを区別することが重要です。
なお、賃金テーブルをどこまで届出対象とするかは、その内容と賃金決定制度との関係によって判断する必要があります。
育児介護休業法では、育児休業、介護休業、子の看護等休暇、介護休暇、所定労働時間の短縮措置など、さまざまな制度が定められています。
これらについて、独立した「育児介護休業規程」を作らなければならないと考えている会社もありますが、必ずしもそうではありません。
育児・介護休業に関する事項を、就業規則の中にまとめて定めても問題ありません。また、本則に基本的な事項を定め、詳細は別の育児介護休業規程に委任する方法も認められています。
したがって、重要なのは独立した規程があるかどうかではなく、法律上必要な事項が適切に定められているかどうかです。
①育児休業・介護休業の対象者や申出手続
②育児休業・介護休業の期間
③子の看護等休暇・介護休暇の取扱い
④休業・休暇中の賃金の取扱い
⑤短時間勤務制度などにおける労働時間・賃金の取扱い
⑥その他、会社が設ける関連制度の労働条件
なお、就業規則の法定記載事項と、育児介護休業法上の事業主の措置義務は区別する必要があります。
しかし、育児介護休業法に基づく制度の適用がなくなるわけではありません。
就業規則や育児介護休業規程を作成していない会社でも、法律上の要件を満たした従業員から育児休業などの申出があれば、法令に従って対応する必要があります。
例えば、法律に従う旨だけを定めている場合と、対象者、取得日数、申出方法などを具体的に定めている場合では、修正の必要性が異なることがあります。
ただし、規程の内容が改正後の法律を下回る場合は、見直しが必要です。
令和7年4月・10月施行の育児介護休業法改正では、子の看護等休暇の見直しや、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対する柔軟な働き方を実現するための措置などが実施されています。
一方、本則と別規程で内容が食い違うリスクもあります。
そのため、別規程にする場合は、本則に「育児・介護休業等については別に定める育児介護休業規程による」などの委任規定を設け、内容を整合させることが望ましいでしょう。
会社には、就業規則以外にもさまざまな社内ルールがあります。
例えば、賃金に関する内規、慶弔見舞金の取扱い、出張旅費のルール、店舗運営マニュアルなどです。
これらについても、内容によって就業規則の一部と判断されることがあります。
就業規則に当たるかどうかは、書類の名称だけで決まるわけではありません。
例えば、次のような内規です。
①役職手当の支給条件を定めた内規
②休職期間や復職条件を定めた内規
③懲戒処分の種類や事由を定めた内規
④特別休暇の取得条件を定めた内規
これらは、従業員の労働条件や服務規律に関するルールです。
そのため、会社が「就業規則ではなく内規として作成した」と説明しても、実質的に就業規則の一部に当たる場合があります。
例えば、次のようなものです。
①電話応対マニュアル
②接客マニュアル
③社内の稟議書の処理手順
④商品の発注手順
⑤営業活動の管理資料
これらは、通常、業務の具体的な実施方法を定めた資料で、従業員の労働条件や懲戒規定等を定めたものではありません。
そのため、直ちに就業規則として届け出る必要があるとは限りません。
ただし、マニュアルの中に懲戒処分や労働条件について独立した規定を設けている場合などは、別途判断する必要があります。
その内容によっては、労働基準法第89条の就業規則記載事項に該当する可能性があります。
一方、会社がその都度個別に判断する任意の給付について、社内の決裁基準だけを定めている場合は、同じ取扱いになるとは限りません。
ただし、「会社の裁量で支給する」と記載していても、実際には一定条件で必ず支給している場合などは、運用実態も確認する必要があります。
業務上の管理資料などであれば、従業員全員に公開する必要がないものもあります。
しかし、実質的に就業規則に該当する内容については、労働基準法第106条の周知義務や労働契約法上の効力の問題があります。
例えば、従業員に知らせていない秘密の懲戒基準に基づいて処分を行う場合は、処分の有効性が問題になります。
そのため、内規を非公開にしておけば、就業規則の届出や周知をしなくてもよいというわけではありません。
社内資料を作成する場合は、次のように区別するとよいでしょう。
| 社内資料 | 届出の考え方 |
|---|---|
| 賃金・手当の支給基準 | 就業規則の一部となる可能性が高い |
| 休職・復職の統一的なルール | 就業規則の一部となり得る |
| 懲戒処分に関する規定 | 就業規則としての取扱いが必要 |
| 一般的な業務マニュアル | 通常は届出不要 |
| 社内決裁・稟議の手順 | 通常は届出不要 |
| 慶弔見舞金の支給基準 | 支給内容・制度の性質による |
会社としては、社内資料の名称ではなく、従業員の労働条件や服務規律を統一的に定める内容かどうかを確認することが重要です。
就業規則と雇用契約書の内容が異なる場合、どちらが優先されるのでしょうか。
この問題は、労働契約法第7条・第10条・第12条によって判断します。
例えば、次のような場合です。
就業規則:基本給は月額25万円以上
雇用契約書:基本給は月額22万円
この場合、雇用契約書の基本給は就業規則の基準を下回ります。
労働契約法第12条では、就業規則の基準に達しない労働条件は、その部分について無効となり、就業規則の基準によると定めています。
したがって、この例では、原則として月額25万円の基準が適用されます。
従業員が月額22万円で同意していたとしても、就業規則の最低基準を下回る条件を有効にすることはできません。
例えば、次の場合です。
就業規則:基本給は月額25万円以上
雇用契約書:基本給は月額30万円
この場合、月額30万円という個別の労働条件は、原則として有効です。
就業規則は、個々の労働契約について最低基準としての効力を持つため、就業規則より有利な労働条件を個別に定めることは可能です。
ただし、労働協約や他の法令による制限がある場合は別途検討が必要です。
例えば、採用時の雇用契約書に基本給30万円と記載されていた従業員について、会社が就業規則の賃金制度を変更し、基本給を引き下げようとする場合です。
この場合、雇用契約書に30万円と記載されているからといって、将来にわたり一切変更できないとは限りません。
労働契約法第10条の要件を満たす合理的な就業規則変更によって、労働条件が変更される場合があります。
一方、同条ただし書では、就業規則の変更によっては変更されない労働条件として個別に合意していた部分について、原則として変更の効力が及ばないとしています。
そのため、単に金額が記載されている場合と、就業規則の変更によっても変更しない旨の特別な合意がある場合では、判断が異なります。
例えば、特定の従業員について、採用条件として特別な手当を支給することがあります。
その内容が法令や労働協約に違反せず、就業規則の最低基準を下回るものでなければ、個別の労働契約で定めることは可能です。
ただし、他の従業員との待遇差に法令上の問題がないかは別途確認する必要があります。
就業規則と雇用契約書の関係は、次のように整理できます。
| 状況 | 原則的な取扱い |
|---|---|
| 雇用契約が就業規則の基準を下回る | その部分は無効となり、就業規則の基準による |
| 雇用契約が就業規則の基準を上回る | 個別の合意が原則として優先 |
| 雇用契約に記載のない事項 | 合理的で周知された就業規則によって補充され得る |
| 就業規則を合理的に不利益変更した場合 | 労働契約法第10条による変更が認められる場合がある |
| 規則変更によって変更しない特別な合意がある | 原則としてその合意が保護される |
会社としては、採用時に特別な労働条件を定める場合、その条件を将来どのように変更できるかも考慮して契約内容を決めることが重要です。
就業規則を作成・変更する際、従業員の過半数代表等の意見を聴く必要があります。
過半数を組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者を選出します。
労働基準法施行規則第6条の2では、投票や挙手などの方法で選出され、使用者の意向に基づいて選出された者でないことが求められています。
例えば、社長が「今回は店長のAさんを従業員代表にする」と決める方法では、適正な選出とはいえません。
また、会社が候補者を決め、従業員に形式的な承認だけを求める場合も、使用者の意向による選出と判断されないよう注意が必要です。
はい、法律上、従業員代表を正社員に限定する規定はありません。
パート・アルバイト、契約社員なども、要件を満たせば従業員代表になることができます。
ただし、労働基準法第41条第2号の管理監督者に該当しないことなどの条件があります。
なお、管理監督者以外に労働者がいない事業場については、例外的に管理監督者の中から従業員代表を選出できます。
ただし、会社が一方的に指名することはできず、投票や挙手などの方法で適正に選出する必要があります。
また、この例外は就業規則の意見聴取には適用されますが、36協定の締結には適用されません。
従業員代表を選出する際は、何のための代表者なのかを明らかにする必要があります。
例えば、「就業規則の変更に関する意見聴取のための従業員代表を選出する」といった方法です。
36協定の締結やその他の労使協定のために選出された代表者について、その選出時に就業規則の意見聴取まで対象としていたかは確認が必要です。
従業員代表を選出したことがあるという理由だけで、あらゆる手続の代表者として使用できるわけではありません。
就業規則を作成・変更する際には、正社員やパートタイマーなどを含む、事業場全体の従業員の過半数代表等から意見を聴く必要があります。
一方、パートタイム・有期雇用労働法第7条では、パートタイマーに関する就業規則を作成・変更する場合、パートタイマーの過半数を代表する者からも意見を聴くよう努めることとされています。
これは努力義務であり、必ずしもパートタイマーの代表者から意見を聴く必要はありません。
そのため、事業場全体の従業員代表等から適切に意見を聴いていれば、パートタイマーの代表者から別途意見を聴いていないという理由だけで、就業規則の作成・届出ができなくなるわけではありません。
ただし、パートタイマーの労働条件を変更する場合は、実際に対象となるパートタイマーの意見も確認しておくことで、変更後のトラブル防止につながります。
なお、事業場全体の従業員代表がパートタイマーであり、パートタイマーの過半数代表としても適正に選出されている場合は、同じ人から意見を聴くことも可能です。
従業員代表の選出方法に問題があると、就業規則の作成・変更手続に問題が生じます。
そのため、会社としては、選出の目的、選出日、投票・挙手等の結果などを記録しておくことが望ましいでしょう。
また、代表者を選出した従業員が退職した場合や、代表者の任期を定めている場合などは、必要に応じて改めて選出する必要があります。
従業員が会社のルールに違反した場合、会社は懲戒処分を検討することがあります。
しかし、就業規則に懲戒規定があっても、その規定が適切に周知されていなければ、処分の有効性が問題になります。
フジ興産事件(最高裁平成15年10月10日判決)では、就業規則の周知が懲戒処分の効力を判断するうえで重要であることが示されています。
したがって、会社が就業規則を作成し、社長や人事担当者だけが保管していた場合、従業員に周知していなければ、その懲戒規定を根拠として処分することはできません。
例えば、就業規則を労働基準監督署へ届け出たものの、従業員には一度も見せておらず、閲覧できる状態にもしていなかった場合です。
この場合、届出済みであることを理由に、当然に懲戒規定の効力が認められるわけではありません。
就業規則の届出と、従業員への周知は別の手続です。
会社が適切に周知していれば、従業員が実際に読んでいなかったという理由だけで、懲戒規定の効力が否定されるわけではありません。
例えば、会社が就業規則を各作業場に備え付け、従業員がいつでも確認できる状態にしていた場合です。
その従業員が「私は読んでいない」と主張したとしても、それだけで周知がなかったことにはなりません。
ただし、周知の方法や実際の閲覧環境に問題があれば、個別の検討が必要です。
どんな懲戒処分もできるわけではありません。
労働契約法第15条では、懲戒処分について、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合は権利濫用として無効になると定めています。
例えば、1回の軽微な遅刻に対して、直ちに懲戒解雇するような場合です。
懲戒規定に「遅刻した場合は懲戒解雇できる」と記載されていても、その処分が当然に有効になるわけではありません。
また、減給の制裁については、労働基準法第91条による金額の上限もあります。
懲戒処分を検討する際は、少なくとも次の事項を確認することが重要です。
①問題行動が発生した時点で、懲戒規定が定められていたか。
②従業員に懲戒規定が適切に周知されていたか。
③問題行動が懲戒事由に該当するか。
④処分の重さが行為の内容に照らして相当か。
⑤就業規則に定めた懲戒手続を守っているか。
⑥過去の同様の事例との取扱いに不合理な差がないか。
就業規則の懲戒規定は、会社が職場秩序を維持するための重要なものです。
しかし、規定を設けるだけでは十分ではありません。
会社としては、適切な懲戒規定を設け、従業員への周知と実際の処分手続を適正に行うことが重要です。
当事務所は、困っている経営者の味方です。初めての方も、遠慮せずにお電話ください!
プロの社労士にお気軽にお問合せください
ポプラ社会保険労務士事務所
〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内
1-8-39 HP丸の内ビル3F
名古屋市営地下鉄 桜通線・鶴舞線「丸の内駅」8番出口 徒歩1分