名古屋で開業12年、顧問契約年間解約率3.6%
ポプラ社会保険労務士事務所
住所:〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内1-8-39 HP丸の内ビル3F
アクセス:名古屋市営地下鉄 桜通線・鶴舞線「丸の内駅」8番出口 徒歩1分
◆採用(募集、面接、内定、内定取り消し…)
◆雇用契約(労働条件通知、試用期間、有期雇用…)
◆労働時間・残業時間
◆給与、残業代、賞与
◆休日(法定休日、代休、振替休日…)
◆有給休暇
◆健康診断
◆異動(配置転換、転勤、転籍、出向…)
◆休業
◆退職(自己都合退職、退職勧奨、契約期間満了退職…)
◆懲戒処分(始末書、減給、出勤停止、降格、降級)
◆副業
◆労災、雇用保険、社会保険
自ら退職を申し出た者が、あとから退職事由を「会社都合に変えてほしい」言ってくることがあります。
結論から言いますと、事実に即して自己都合退職で処理をしているのであれば、退職者が言っていることが間違っているので、ほっておいてもかまいません。 ただし、そういうことを言ってくる方は、解雇されたと言ってきたり、残業代請求など会社に要求してくる可能性があります。
それはそうと、なぜ、そんなことを言うかというと……
話すことができるなら「なぜ、会社都合にしてほしいのか」を本人への確認をしてください。
1.の場合
会社都合にすると失業手当が早く、場合によっては金額も多く貰えるんです。 会社が何もしていないのに自ら退職を申し出た方の場合は、丁重にお断りしてください。
2.の場合
事実がどうであれ、一度モメた退職者が主張しだしたら、まず、相手の主張と要求は何かをしっかり確認してください。
退職勧奨や自己都合退職かどうかあいまいな場合は、当事務所にご相談ください。
時季変更権と時季変更の申し込み
(1)時季変更権
会社が、有給休暇を使用する日を変更することができます。ただし、非常に厳しい条件を満たすことが必要です。
主な条件は「業務の正常な運営をさまたげる事由」があること。この事由は、ただ単に業務多忙であったり、慢性的な人手不足という事由だけでは不十分です。
有給を使用する人の代わりの従業員を探したり、ほかの人の勤務予定の変更しても、代わりの労働者を確保できない場合に認められる場合があります。
裁判例から抜粋して理由を挙げると、
などなど、とにかく、よっぽどの理由がない限り、申請された有給休暇の日程変更は難しいってことです。強制的に「有給休暇を取らないでくれ!」とはいえませんが、お願いならできます。それが次の「時季変更の申し込み」です。
(2)時季変更の申し込み
時季変更の申し込みとは、経営者や上司が「この日に人数が少なくなると困るから、別の日にしてくれない?どうしてもその日がよいなら仕方ないけど」と有給休暇の申請をしてきた従業員に頼むことです。
これはただのお願いなので、従業員が「この日に休みたいんです」と言えば、その日に有給休暇を使用することを止められません。ただ、法律的に、経営者や上司が、有給休暇の申請を出されたら、有無を言わさず、有給休暇の使用を承認すべきだってことではないということです。
もちろん、会社側からのお願いなので、これを断ったからといって従業員に不利益な取り扱いをしてはいけないんです。
法的に禁止されているわけではありませんし、業務への適正を把握するために必要であればOKですが、実際に内定前や面接時に健康診断を行うことは、応募者の気持ちを考えるとややハードルは高いでしょう。
厚生労働省では、就職差別につながる恐れがあるので慎重に行うことを呼び掛けています。
もちろん、NGとされる場合もあります。例えばHIV検査やB型肝炎等の感染性の低い感染症の情報などは、職務上特別な必要性がある場合を除き、取得すべきでないという行政の通達があり、裁判例でもHIVの無断検査を違法としています。
一方で。バスの運転手を採用するのに、てんかんや睡眠時無呼吸症候群などがあってはならないので、健康上のチェックが欠かせない職種の場合は、健康診断をすべきでしょう。
採用後、少しした後に持病が発覚するのはよくあるケースです。
そんなトラブルを避けるためにも採用選考時に健康診断したいという企業も多いです。
そこで、当事務所では面接時に「健康状態や既往歴のアンケート」を書いてもらうことを推奨しています。
例えば、過去1年の通院歴、うつ病、腰痛、腱鞘炎などの有無を「ある なし 答えたくない」というような3択にし、任意で答えてもらうような形式にします。
さらに健康状態だけでなく、前職の退職理由、家族の介護、障がい者手帳の有無など聞きにくいこともアンケートにして採用選考時に書いてもらうとよいでしょう。
代休に法的な強制力はありません。代休の制度を設けるかどうかは会社の自由です。就業規則に規定するかどうかも自由です。
就業規則に規定する場合は「業務上の判断により、代休を付与することがある」というように規定すればよいでしょう。休日振替とは、残業代の取り扱いなど、根本的に異なりますので、注意が必要です。
経営者にとっては非常に厳しいですが、労働基準法で休業手当の支払いが必要とされています。本来だったら従業員は働けたはずだが、経営側の責任で、働けなくなったので、給与を補償せよということです。
親会社以外も、取引先から納品がないなどの場合も同様に会社都合と判断されてしまいます。
コロナも厚生労働省の見解では、会社都合の休業とされています。
会社都合の休業かどうかは、①外部要因が休業の原因か②経営者として最大の注意を尽くしても避けることのできない事態かの2つの基準で判断されます。
コロナで緊急事態宣言が出ている場合、①については会社に原因はないと思われますが、②は微妙で会社に原因があるといわれる可能性もあります。
緊急事態宣言が出ていても、テレワークや配置転換で休業の回避が可能な場合もあるでしょうし、飲食店であれば、ウーバーイーツを導入して配達できるようにすれば、休業を回避できる=会社都合の休業と判断される可能性があります。
コロナが会社都合の休業になる可能性が高いことには、納得いかない経営者の方もいるでしょうし、私としてもあまり納得はいっていないのです。ただ、雇用調整助成金の特例もあるので、特に大きな議論にはなっていないですね。
コロナの休業は『Q.24 一日の一部を休業した場合や途中で帰らせた場合、休業手当は必要か?』もご参考ください。
ちなみに、震災による計画停電や休業の場合は、経営者に責任はないので、休業手当を支払う義務はありません。
有期の労働契約を自動更新にすること自体は可能です。しかし、自動更新にすることは、会社側がリスクを背負うことになり、おススメできません。
契約更新がめんどくさいからという理由で、アルバイトや契約社員の労働契約を自動更新にするなんてことはやめたほうがよいです。
有期契約を自動更新にすることで、有期契約にしている意味が失われてしまうことがその理由です。自動更新は、基本的には期間の定めのない契約と同じと解釈されますので、有期契約を期間満了で当然に終了させることも困難になります。
求人広告やハローワークの求人票に記載した労働条件が、そのまま採用時の労働条件にはなることを保障するものではありません。
求人広告は、あくまで広く多くの人を対象に募集するものなので、ある程度ざっくりしたものになります。
契約する労働条件が、求人票と異なる場合には、その旨をよく労働者に説明し、実際の労働条件を明示することが必要です。
また平成30年(2018年)1月1日の職業安定法の改正で、当初の労働条件が変更される場合は、変更内容を明示することが義務づけられています。
※昨今は、求人票と面接時に提示された労働条件が違うというケースが多く、ハローワーク等への苦情がかなり増えていますので、できるだけ求人票と同一の労働条件を提示することが求められています。
裁判例を見ても、副業(兼業)を禁止できるという考えと禁止できないという考え方があります。
禁止できるという考え方は、労働者が信義を尽くし誠実に労働力を提供する義務があるという民法の考えに基づいています。
禁止できないという考え方は、労働者が労働力を提供するのは就業時間中だけで、それ以外の時間をどう使っても労働者の自由だということです。
もともと裁判例等では、企業機密の漏洩や同業他社での副業で本業の事業に影響が出る場合や、本人が休みの日や退勤後に働きすぎて、本業で実力を発揮できない場合など、特定の場合のみ副業を禁止できるという考え方が主流です。
ただし、日本のほとんどの会社は、正社員の副業は禁止にしてきたと思います。ちなみに働き方改革法案以前は、厚生労働省の就業規則のひな型も副業禁止の規定がありました(働き方改革法案施行後は、厚生労働省の就業規則ひな形の副業禁止規定はなくなりました。)
会社としては「副業禁止」のスタンスをとることもできますが、どんな場合に禁止して、どんな場合に認めるかの判断が必要になってきます。では、どうすればいいのでしょう?
実務上は、情報漏洩や同業他社での副業の可能性もあるので、兼業を許可制にするのがよいでしょう。
休日をどう使うかは自由だが、休日に労働することで、翌日の仕事に影響が出る場合も兼業の禁止や許可制は可能でしょう。
ちなみに、2019年の働き方改革法案(労働基準法改正等)の前後から、時間外労働の規制が厳しくなり、大手企業をはじめに残業の抑制を始めています。
残業が減ると今までもらっていた給与(残業手当)がもらえなくなり、労働者の生活が苦しくなるということがあり、政府や厚生労働省も副業禁止の方向性を改め、副業解禁へと法改正も含めて進めていますので、時代の流れは、副業OKです。
本採用拒否ともいいます。試用期間中だからといって誰でも解雇できるわけではないんです。一般的な解雇より、広い範囲で認めれやすいですが、解雇の要件を満たす必要があります。一般的な解雇より広い事由が認められる範囲は次のような場合です。
しかし、一般社員と比べて、解雇しやすいような上記の事由があっても、解雇にできると早々に判断できません。
試用期間中であることから、会社がどのように教育し、指導したかが重要になります。会社が本人に改善するための指導せず、放置していた場合は解雇は適当ではありません。通常の解雇でもそうですが、改善の機会を与えて、会社がしっかり指導することが求められます。
就業規則への記載
一般的な解雇より広い範囲で認められるのですから就業規則にも、本採用拒否の事由を列挙すべきでしょう。
就業規則の休職規定に、「休職期間が満了しても復職できない場合は、休職期間満了の日をもって退職する」とか「休職期間満了時に休職事由があるときは退職する」という規定はありませんか?
このような休職の規定があれば、休職期間満了時に当然に退職してもらうことは可能です。 当然に退職という形にするには、会社が従業員に対して、休職命令を発している必要があります。 会社が休職命令を発せず、本人が欠勤している場合は、ただの欠勤が続いているだけなので、休職期間満了で当然に退職する(自然退職となる)ことはありません。
そもそも、休職期間が満了しても病気が治らない場合どうするのかという規定がないともめる要因となります。 たまにある就業規則の規定で「休職期間満了しても復帰できない場合は、自然退職とする」の「自然退職とする」部分が「解雇する」になっている場合は、自然退職にはなりません。
また就業規則に定められている休職期間が短すぎる場合(1か月以下)は、裁判では、休職期間が短すぎて、自然退職は無効。 =在職中なので、退職してから現在までの賃金を払えと判決が出ることがあります。 1か月以上の休職期間があるので、休職期間が必ず有効になるわけではありません。
30年以上前の就業規則は、終身雇用を前提としていたので、休職期間を3年とか5年などの長期の休職を認めていることも多かったです。
最近は、定年まで働きたい人は減ってきていますので、最近の就業規則では、休職期間を3か月や6か月などと短く設定するか、勤続年数によって休職期間を段階的に長くすることが多いです。
うつ病などの精神疾患の場合は、なかなか復職できないことも多いですし、会社の社会保険料の負担も大きいので、休職期間が3年や5年とかは中小企業の就業規則としては厳しい気がします。 もちろん、会社に必要な人であれば、特例で休職期間を延長することもできます。
健康診断料金は会社が負担すべきものです。法律で会社が負担する義務があるわけではありませんが、定期健康診断などを受けさせることが会社の義務なので、健康診断の保険料は会社負担が望ましいと労働基準監督署等では指導されることがあります。
一方で、人間ドックやバリウム・胃カメラの検査など法定外の健康診断料金の負担は、従業員に負担してもらっても問題ありません。
また、再検査や精密検査の費用は、労使間の取り決めによります。健康診断の再検査のほとんどは、健康保険が使えることで、3割負担になるので、個人的には従業員さんに払ってもらっても問題ないと思います。
健康診断を受診している時間の『賃金』は、支給しなくてもOKです。
一般的に通常の就業時間中に健康診断を受ける場合は、賃金を支給する会社が多いです。
業務運営上の理由で担当職務や働く場所を変えるのは、会社に認められた人事権の範囲です。認められていても、もめる要因となるので、就業規則に配置転換について記載すべきでしょう。
また、職種や勤務地を限定した雇用契約の場合は、本人の同意なしで変更することはできないとの裁判例もあります。しかし、会社の業務上どうしても必要な場合もありますので、職種や勤務地を限定している雇用契約でも配置転換がある旨を記載する必要があります。
どちらにしても、本人が慣れ親しんだ営業職から、畑の違う事務職に変わるわけですから、業務上の必要性と本人を選んだ理由を誠実に説明することが重要です。本人のモチベーションも下がるはずなので、本人が力を発揮できるような環境づくりをすべきでしょう。
出張中の移動時間は、実労働時間ではないので、休日労働や時間外労働になりません。ただ単に、交通機関に乗っているだけの時間は、休憩時間に近い時間と解釈されています。
ただし、移動時間中に物品の監視など業務上の指示がある場合は、労働時間になりますので、休日労働に該当します。
物品の監視の業務上の指示って何?ですよね。この物品の監視の通達が出たのは1948年ですから、現金とか機密文書のことを指しているのですが、現代ではそんなことはほとんどないと思います。
もちろん、移動時間中に打ち合わせをしたり、業務の資料を作ったりしていれば、当然労働時間になります。
休日労働の回数に限度はありません。
36協定で休日労働の回数を定めた範囲内である必要はあります。
すべての法定休日に出勤してもらうことはできるんですが、すべての休日に出勤すると、1か月の労働時間が相当増えるので、該当従業員の健康面には十分注意が必要です。2019年働き方改革の労働基準法改正では、2か月平均80時間を超える残業や単月100時間超える残業は、36協定以内でも即違法になりますし、そうでなくても注意が必要です。
会社としては、従業員が健康に働いてもらう安全配慮義務がありますし、労働局から過重労働削減の指導を受ける可能性もあります。
現に支給している通勤手当をカットするには、就業規則などで根拠規定が必要です。
実際に出勤した時のみ支給する旨など就業規則に明記し、支給基準を明確にする必要があります。
また、今まで通勤手当も含めた金額を有給休暇取得時に支給していた場合、個別の同意を取らずに就業規則の変更のみで、通勤手当をカットすることは、就業規則の不利益変更に当たる可能性があり、注意が必要です。
残業は、上司からの業務命令で行うべきことで、本来、自主的な残業は、労働に当たりません。労働に当たらないので残業手当は不要です。
しかし、自主的な残業は、ほとんど存在しません。
残業を会社が黙認している場合は、自主的な残業も「労働」になるので、残業代を支払うべきだというのが、労働局の指導や多数の裁判例の流れです。
従業員が勝手に働いていたり、又はよく働く従業員の好意に甘えて働いてもらったり、はたまた従業員が仕事が遅くて残業してしている場合も、さらには家族とケンカをしていて家に帰りたくなくて残業している人にも、働いている事実があり、会社が残業を黙認していれば、残業代を支払わなくてはなりません。
他にも、「客観的に見て、勤務時間内に終わらないような業務を与えた場合」は、黙示の残業命令だとみなされ、残業代を支払わねばなりません。
このような場合は、「残業をするな」という明確な業務命令が必要です。
口頭で言っても証拠が残らないので、『残業禁止通知』とか『残業禁止命令』とかを書面で出すのがよいでしょう。
その場合、残業することが業務命令違反となります。
ですので、就業規則にのっとった懲戒処分の対象となります。
とはいっても、現実問題として、働いてくれている従業員に懲戒処分は酷ですし、好きで残業している従業員は稀です。
「〇時になったら、パソコンの電源や照明を落とす」など、強制力を持って、残業をやめさせてください。最初は嫌がられますが、時間を区切ることで、従業員が仕事のやり方を変えるきっかけになります。
経営者としては心苦しい面もあるでしょうが、勝手な残業をやめさせるには、心を鬼にして取り締まらなければ、最終的に残業代を支払わなくてはならないことになってしまいます。
従業員が重大な就業規則違反、重大な背信行為、横領、窃盗などを起こした場合、損害賠償請求ができます。しかし、損害賠償請求できる場合は、ある程度限定されます。
特に過失の場合は、仕事自体の性質や従業員教育の不徹底、会社の管理不足を問われます。
過失の場合は、損害は、会社と従業員が公平に損害を負担すべきだという考えから損害賠償金額が減額されることが多いです。
裁判等では、故意や重大な過失な場合でも、基本的には、会社が被った実害の1割~3割くらいしか認められないことが多いです。
懲戒処分と損害賠償についてもよく質問があります。できないと勘違いされるが多いことですが、懲戒処分と損害賠償は別物なので、懲戒処分をして、さらに損害賠償請求をすることは可能です。
しかし、従業員の過失が軽いものの場合は、懲戒処分が行われていれば、損害賠償をすることができないという裁判例もあります。
まず、禁止するには、就業規則に退職後の競業禁止(競業避止)の規定による根拠が必要です。 また、個別に合意を取り付ける必要もあります。
(1)同業他社への就職について
退職者には、職業選択の自由がありますので、狭い範囲でしか、禁止することはできません。 (1)期間の制限、(2)対象地域(3)対象職種(4)代償の有無の4つの要件が必要といわれます。 代償とは、この制限に対する何らかの代償が支給されることで、在職中の役職手当、研究手当の支給などでも、差支えありません。
例えば、
ただし、現実に禁止できたとしても、本人が同業他社に就職した場合は、それを実力行使で止めるのは、現実的ではなく、対処は難しいでしょう。
やったもんがち、みたいな感じで悲しいですが。
ただ、もちろん、本人が顧客情報を持ち出すなど、法を犯したり、損害賠償請求の対象になる場合があれば、同業他社への転職してしまっても、そっちで訴えることはできます。
(2)得意先への営業禁止
退職後の得意先や顧客への禁止も、同業他社への就職禁止と同様に、期間の制限、地域の制限が要件となります。
例えば、
「理由のいかんにかかわらず、退職後1年間は、在職時に担当した営業地域(〇〇県)の貴社の顧客に対し、いかなる営業活動も行ってはならない」
という文面になるでしょう。
営業手当を支払っているからといって、残業代が不要になるとは限りません。
営業手当を残業代相当分として支給するためには「営業手当が残業代であると雇用契約書か就業規則で明示すること」が必要です。
営業手当がついているけど、残業代なのか、営業という職種に対してついているのか、交通費や旅費の代わりなのか、従業員にはわからないということが多いです。それを残業代相当の手当だと明確にするため、雇用契約や就業規則で明示するのです。
また、営業手当が残業代相当分と明示していても、実際の残業が営業手当を超えた場合はその超えた分を別途支給する必要があります。固定の営業手当を支払っているから残業代は、必要ないということはありません。
でも、そもそも、営業は、外勤なので、残業代は発生しないんじゃないかと思う方もいるでしょう。そんな方は、「労務トラブルQ&A Q20 営業社員の外回りの労働時間は、残業時間にならない?」を参考にしてください。
労働基準法38条には、セールスや集金、取材、調査などの外回り、労働時間の算定が難しいので、所定労働時間労働時間働いたものとみなす、という事業場外みなし労働時間制という制度があります。
令和3年3月までは後述する労働時間の算定が難しいという要件を満たすことができず、ほとんどの営業職が事業場外みなし労働の適用ができませんでした。
しかし、令和3年3月の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」において、下記2.労働条件の算定が難しいという要件に緩和が見られましたので、今後は、営業社員の外回りも事業場外みなし労働時間制度
事業場外労働のみなし労働時間制の2つの要件
この2つの要件を満たさないと事業場外みなし労働時間制の適用はできません。
1.事業場外で業務したこと
これは、外回り・外勤のことです。会社の外で、セールスや集金、取材、調査をすることなどといっており、建設現場などの屋外作業は含まれません。
2.労働時間の算定が難しいこと
これは、会社(使用者)が労働時間を把握するしようとしても、把握ができない場合というのが二つ目の要件です。会社が具体的に指揮監督が可能な場合は、労働時間を実質的に把握できるのでみなし労働時間は適用できません。
次の一つでも当てはまるとみなし労働時間は適用できません。
どの営業職でも一つくらいは当てはまってしまうんじゃないかと。
(1)グループで行動し、管理者(上司)がいる場合
(2)※携帯電話などによって、常に指示を受け、行動を報告しているような場合
(3)訪問先や帰社時刻などの具体的指示を受け、指示通りに行動し、帰社する場合
(4)行き先が決まっていない飛び込み営業などでも詳細な事後報告をすること
※令和3年3月の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」で
携帯電話を持っていても、事業場外みなし労働時間が採用できるという解釈の変更がありました。コロナ禍でテレワークが急速に広まり、このような新たな解釈がされるようになってきたので、今後も新しい解釈や従来の解釈の変更に注意しながら進めなければなりません。
以下、抜粋
情報通信機器を労働者が所持していることのみをもって、制度が適用されないことはない。
・ 勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断すること ができる場合
・ 勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用い
て行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で 離れることができ、応答の
タイミングを労働者が判断することができ る場合
・会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、又は折り返しの
タイミングについて労働者において判断できる場合
パート・アルバイトの勤務日数が変更になった場合も、すでに発生している有給休暇の日数は、当初のままです。
例えば、
→入社6ヵ月後に、5日の有給化が発生。
入社当初から週5日30時間勤務の人は、入社6ヶ月で正社員と同じ有給休暇日数(10日)が必要ですが、この場合は、週3日20時間勤務で6ヶ月経過しているので、勤務日変更の影響は受けません。この人には、5日の有給休暇を与えましょう。
では、6ヶ月目(基準日)に契約変更がある場合は、どうなるか?
この場合は、新しく変更した契約の勤務日数に応じた有給休暇を与える必要があります。上記の例とは逆になりますので、注意してください。
よくある勘違いなんです。
試用期間中で14日以内であれば解雇予告不要、14日を超えれば試用期間中でも通常の従業員と同じく解雇予告が必要。この14日ですが、労働日数ではありません。暦日カウントなので、入社日から15日目には解雇予告が必要になります。
◆入社日から14日以内だからといって簡単に解雇できるわけではない
注意しなければならないのは、入社14日以内だから簡単に解雇できるわけではないということです。もちろん、試用期間中の者は、通常の労働者より広い範囲で解雇の自由が認められますが、軽微な理由での解雇は難しいのです。解雇の理由に正当性がない場合は、不当解雇として争われる余地が残ります。
始末書は、反省文や謝罪文という意味を持っており、これを強制すると、個人の自由な意思を尊重する憲法などの法理念に反する場合があるからです。
本人が始末書を提出しない場合は、報告書や顛末書という形で報告させることはできます。この場合は、就業規則で報告書を提出を明記しておくことも有効です。
報告書を提出しない場合には、会社への報告義務違反として、懲戒処分も可能になります。なお、始末書という名称でも就業規則に、報告書としての意味しか持たないものであると明記されていれば、提出を義務付けても問題はありません。
会社の都合で従業員を休ませたり、途中で帰ってもらったり、一部を休業してもらった場合は、休業手当を支払う必要があります。
◆会社の都合で休業させるとは…
(1)取引先の撤退などでの材料不足での休業
(2)設備などの整備不備、欠陥、検査等による休業
(3)従業員数が足りない場合の休業
(4)経営難による休業
(5)監督官庁の勧告により休業する場合
上記以外も、会社の都合で休業した場合は、休業手当の支払いが必要になります。「今日は暇なので、早めに帰ってください」というのも当然、会社都合の休業です。
◆休業手当は、いくら払う?
1日休んでも、一部休業でも、支払う金額は『1日分の平均賃金の6割』以上。
6割以上なので、6割しか払わない会社もあります。
法律上は、平均賃金の6割でもOK(本人には100%請求する権利はありますが)。
また支払うのは、1日の平均賃金の6割以上です。
1日の平均賃金が8,000円の人は、4,800円以上支払う必要があります。
全休の場合も、途中で帰った場合でも、4,800円払えば、法的には問題なしです。
◆1日8時間 時給1,000円、1日の平均賃金4,800円の人の休業手当
(1)1日全部休業させた場合 休業手当4,800円
(2)5時間働いた後、帰らせた場合 時給5,000円 休業手当0円
(3)4時間働いた後、帰らせた場合 時給4,000円 休業手当800円
※1日働いたら8,000円もらえる人を会社都合が休ませて、4,800円しか支払わないのですから、従業員さんには不満がたまりますので、経営難でない会社の場合は、6割ではなく8割や満額支払うことが多いです。
◆コロナの休業は会社都合か?
新型コロナウイルスの休業要請での休業は、100%会社都合ではないので、休業手当を支払う義務があるか、と言ったら『ないです』と言いたいのですが、そうではありません。
コロナでの休業要請が出ても会社都合の休業、というのが厚生労働省などの基本的な考え方です。
新型コロナウイルスで休業要請が出ても、会社が営業するかどうかは、経営者が決める、という前提があり、営業と休業という選択肢から、経営者が休業を選択したのだから「会社都合だよ」という考え方です。
具体的には、会社都合かの判断基準は次の2つですが、これがややこしい。。
①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができ
ない事故であること
①はコロナは外的要因と言えるでしょうが、問題は②です。
②に該当するには、使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしているかで判断するということです。
結局、コロナが会社都合かという判断は非常に難しく、100%会社都合とも言えないこともあり、厚生労働省としては、休業手当の要否の解釈にかかわらず雇用調整助成金で補填できるので、休業手当を払ってください、という感じになっています。
最終的に、コロナでの休業に休業手当の支払い義務があるかどうかは、裁判所(司法)の判断にゆだねられると言ったところでしょう。
なお、2022年4月時点の厚生労働省の考え方を踏まえた具体的な基準は、次のようになっています。
ケース | 休業手当休業手当の支払い義務 | |
コロナに感染した、陽性反応が出た | 不要 | 健康保険の傷病手当金を申請できます。 |
発熱があり、労働者が自主的に休む場合 | 不要 | 自主的に休んでいるので。 |
発熱があり、会社が大事を取って休ませた | 必要 | 会社主導の休業なので。 |
協力依頼や営業自粛要請での休業 | 必要 | 会社主導の休業なので |
家族がコロナにかかったため、休業させたい | 必要 | 本人が自主的に休みを申し出た場合は不要。 |
コロナの影響で業務が減ったので休業させたい | 必要 | 業務がない=会社都合の休業と判断されます。 |
緊急事態宣言による営業停止要請 | 不要 | 不要だが、休業手当を支給して雇調金を申請。 |
◆所定労働時間とは?
雇用契約書や就業規則で定められた1日の労働時間(1日何時間働くと決めたか)です。
口頭で雇用契約が成立した場合は、口頭で約束した1日の労働時間のことです。
シフト制の場合は、「1日3時間から5時間程度で週3日くらい」とか、「1日5時間で週3,4日」とか、割とざっくり決まっているとことが多いと思います。
そんな時は、次の判断基準を参考ください。
(1)1か月の1週間の所定労働時間が一定でない場合は、1か月の平均で算出
1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し一定ではない場合等は、
当該周期における1週間の所定労働時間を平均し、 週20時間以上かどうか
を算出します。
(2)所定労働時間が1か月単位で定められている場合は、1か月の所定労働時間
を12分の52で除して算出します
(3)所定労働時間が1年単位で定められている場合は、1年の所定労働時間を52
で除して算出。
(4)夏季や冬季などの繁忙期や閑散期などで一定期間の所定労働時間に長かった
り、短かったりする場合は、繁忙期や閑散期の特定の月を除いて『通常の月
の所定労働時間を12分の52で除して、1週間の所定労働時間を算出』
◆実労働時間にも注意
ただし、契約上の所定労働時間が週20時間未満でも、実労働時間が2か月連続で週20時間以上になり、なお引き続くと見込まれる場合は、3か月目から社会保険加入となると、年金事務所は指導しているようです。
『なお、引き続くと見込まれる場合』が要件ですので、対象の従業員と話し合い、3か月目から週20時間未満の実労働時間にすることを合意して、3か月目の実際の労働時間が週20時間未満になれば加入することはないでしょう。
◆適用拡大対象の従業員が常時100人超の会社とは?
厚生年金保険の被保険者の総数が 12 か月のうち、6か月以上100 人を超えることが見込まれる場合を言います。
ここで言う厚生年金の被保険者は、旧基準の4分の3要件(週30時間以上の従業員)の人数が101人以上ということになります。
なお、令和3年10月から令和4年8月までの各月のうち、厚生年金保険の被保険者の総数が6か月以上100人を超えたことを年金事務所が確認した場合は、対象の適用事業所に対して「特定適用事業所該当通知書」を送付するとのことです。
有給休暇の買い取りは、原則できません。
退職者が有給休暇の買取りを求めてきても、基本的には応じる必要はありません。
買い取りを認めると、会社は「お金を支払えば、有給休暇を与えなくて良い」という扱いをする恐れがあり、労働基準法の有給休暇の趣旨に反するからです。
■消滅した分を買い取る場合は、違法ではない?
有給休暇の買取は原則できませんが、例外があります。
例外は、退職日が決まっており、退職日までに有給休暇の残日数分を取得しきれなかったときは、会社が取得しきれなかった(消滅する)有給休暇を買い取ることは、違法ではないと解釈されます。
この場合も、通常の有給休暇と同じ100%の金額で買い取る場合は、有給休暇の趣旨に反するので違法とされる可能性があります。
消滅する予定の有給休暇を買い取る場合でも、9割や8割の金額で買い取るのが適切でしょう。
また消滅した有給休暇を買い取ることは、義務ではありませんし、賃金でもないので、退職金のような扱いになるでしょう。
残業単価(割増賃金の基礎となる賃金)、時間外割増賃金を計算するときの1時間当たりの単価から除くことができるのは、次の7つの手当だけです。
◆除外できる7つの手当は、労働基準法で決まっています。
(1)家族手当…扶養する家族人数に応じ支給する場合。扶養家族の数に関係なく支給する場合
は除外不可
(2)通勤手当…通勤に要した費用に応じて支給する場合。通勤費用に関係なく全員一律○○円
は除外不可
(3)別居手当 …いわゆる単身赴任手当のことです
(4)子女教育手当
(5)住宅手当…家賃や住宅ローンなどの住宅の費用に応じて支給する場合。賃貸の人は一律●
万円は除外不可。
(6)臨時に支払われる賃金
(7)1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
※社労士試験の時は、「か、つ、べ、し、住宅、り、いち」と呪文のように唱えて覚えました。
この7つの手当限定なので、これ以外の手当や歩合給は残業単価に入ります。
インセンティブも残業単価に入るということはということは・・・。
◆インセンティブや業績給も残業単価に入れたら、毎月単価が変わるよね?
→ ハイ、変わります…。それが正しい計算方法でございます。
インセンティブ、業績給、歩合給は、法的には『出来高払制その他の請負制』の賃金と区分けされます。
計算方法は、
インセンティブ(業績給、歩合給)÷ その月の総労働時間 × 0.25倍
インセンティブ20,000円 ÷ 月200時間 × 0.25 = 25円
基本給や他の固定給の割増賃金の基礎となる賃金に『25円』を加算します。
基本給その他手当の割増賃金単価が1,700円の場合、この月の割増賃金単価は
1,725円になります。
当然、その月の総労働時間(働いた時間)は毎月変わるので、翌月も単価は変わります。
大変ですよね。
なので、これがわかっている企業はインセンティブを2ヶ月に1回の査定して、2ヶ月ごとに払っていたりします。
年俸制とは、1年単位の給与を決定し、その金額を分割して毎月支払う制度です。
また年俸制は、残業代の支払いが不要だという勘違いがありますが、年俸制でも残業代を支払う必要があります。
年俸に残業代を込みにするには、年俸制のどの部分がみなし残業代部分かを従業員に説明し、月に何時間分の固定残業代があるか理解してもらう必要があります。
口頭の説明では、証拠も残りませんので、みなし残業代通知書などで何時間分のみなし残業代があるか通知したほうが良いです。
◆年俸制のみなし残業代の設定
みなし残業代の通知書の表記や設定の仕方は次の通りです。
例えば、年俸600万で月割で50万円ずつ支給する場合
年俸600万円うち基本給部分480万円、みなし残業代部分120万円
月支給額 基本給40万円 みなし残業代10万円
※みなし残業代は、月34.7時間分の法定時間外労働の割増賃金として支給する。
みなし残業代制度(固定残業代、定額残業代)が認められるかどうかに関しては、年俸制でも、月給制(日給月給制)でも変わりません。
みなし残業代制度を導入する際、最低限な要件は、次のようなものがあります。
1.基本給、その他手当、固定残業代部分を明確に区分されている
2.固定残業代の金額と固定残業代に含まれる残業時間を明示する
3.毎月、時間外労働時間を計算し、固定残業代の超過分がないか確認する。
「固定残業代の超過分の支払方法を明記する」「就業規則、雇用契約に明記する」「個別に同意を取る」などの要件がありますが、すべて満たしても「固定残業代制度を導入すると入社時と比べると不利になっている」として訴訟や労働トラブルになる可能性もあります。
固定残業代制度は、会社にとってリスクが高い制度で、導入するには社会保険労務士や弁護士などの専門家への相談をおススメします。
有給休暇の残日数を本人に通知する義務はありません。
給与明細に有給休暇の残日数を表記して、渡している会社もありますが、法的には義務ではなく、会社が有給休暇取得促進のためにやっているものと思われます。
◆有給休暇の管理簿の作成は、義務
2019年の働き方改革法案(労働基準法等の改正)で、有給休暇の管理簿の作成が義務になりました。
どのタイミングで有給休暇管理簿を作る義務が発生するか、というと『有給休暇を与えたとき』に作成する必要があるとのことです。
法的には、有給休暇を消化したときに初めて作成義務が生じますが、事前に有給休暇の日数等を会社が把握し、有給消化でどのくらいの人件費がかかるか試算しておく必要はあるでしょう。
なお、有給休暇の管理簿に記載が必要な項目は次の3項目です。
・時季(年次有給休暇を取得した日付)
・日数(年次有給休暇を取得した日数)
・基準日(年次有給休暇を取得する権利が生じた日)
これだけでは管理できないので付与日数も記載するのが一般的でしょう。
■有給休暇の計算方法は、3種類
有給休暇の計算方法は、『通常の賃金を支払う』『平均賃金を支払う』『標準報酬日額を支払う』の3つです。
(1)通常の賃金を支払う
通常の賃金とは、出勤した場合に支払う金額、次の①+②の合計です。
①基本給や諸手当
・時給=時給×取得日の所定労働時間(働くはずだった時間)
・日給=取得日の日給
・週給=週給÷取得日の週の所定労働日数
・月給=月給÷当月の所定労働日数
②歩合給、インセンティブの金額の1日分
・賃金計算期間の歩合給総額÷賃金計算期間における総労働時間数×
1日の平均所定労働時間数=歩合給の1日分の金額
(2)平均賃金を支払う
直近3ヵ月の平均賃金を求めて、その平均賃金と同じ額を支払う方法です。
次の①②の高いほうを平均賃金として支払います。
①直近3ヵ月の賃金総額÷3ヵ月の暦日数
②直近3ヵ月の賃金総額÷3ヵ月の労働日数×0.6
(3)健康保険の標準報酬日額
労使協定を結んで、健康保険の標準報酬日額で払います。
標準報酬日額とは、健康保険に登録している「標準報酬月額÷30」で計算し
ます。
■歩合給などの有給休暇の金額の計算方法
インセンティブ、業績給、歩合給などは、労働基準法では『出来高払制その他の請負制』の賃金と区分けされ、計算方法が決まっています。
賃金計算期間の歩合給総額÷賃金計算期間における総労働時間数(残業時間含む)
=1時間当たりの歩合給の単価
月のインセンティブ、業績給、歩合給の合計 ÷ その月の総労働時間 × 0.25倍
インセンティブ合計額20,000円 ÷ 月200時間 × 0.25 = 25円
基本給や諸手当の時間単価に『25円』を加算します。
基本給や諸手当の単価が1,700円の場合、インセンティブの『25円』を足して、
1,725円がこの月の1時間当たりの有給休暇の金額になります。
すごくめんどくさいですが、インセンティブや歩合給の金額が変われば、有給休暇の金額も変わるので、月によって、有給休暇の金額は変わります。
■業務との因果関係があるか
業務が原因となっている場合、つまり、業務と相当な因果関係があれば、労災給付の対象になります。
平たく言うと、単なる不注意程度の業務中のケガは基本的には労災になると考えてよいと思います。
本人が故意の犯罪行為や重大な過失によりケガをしたときは、労災給付が制限されたりします。ただ、この場合でも、労災で病院にかかった場合の治療費は、給付されることがあります。
■労災申請したくない。労災申請しないとどうなる?
「労災申請すると、労働基準監督署から目を付けられるんじゃないか」
「なんか怖いので労災申請したくない」
「取引先にばれると取引に影響が出る」という相談を経営者から受けることもあります。
労災申請しないことは、「労災かくし」と言われ、書類送検されたり、大きく報道されることがあります。ただし、平均賃金の6割以上や労災休業補償給付をして、治療費等も会社が負担し、かつ、休業がある場合に労働基準監督署に『死傷病報告書』を出していれば、「労災かくし」にはならないでしょう。
とはいっても、労災保険は、会社が強制加入している損害賠償保険なので、使わないと損です。
メリット制の対象でない中小企業は、労災をいくら使っても保険料が変わることはありません。
一方で、100人以上の企業などでメリット制が適用される場合は、労災を使うと保険料が上がることもあります。
■労災申請の書類とは別の書類『死傷病報告書』を出さないと労災隠しになる!?
知らない経営者も多いかと思いますが、労災で休業や死亡があった場合は、労働基準監督署の安全衛生課に、『死傷病報告書』を届け出する義務があります。
この『死傷病報告書』を出さないだけで、労災かくしになります。
労災の治療費(5号)や休業補償(8号)の書類を出して終わりではダメで、休業や志望があった場合は、必ず『死傷病報告書』を届け出てください。
これは、ほんとによくある勘違いですので、注意が必要です。
当然、会社としては、労災の治療費や休業補償の給付を受けている=労働基準監督署に労災の書類を出しているので、労災を隠す意図はないのはわかりますが、
休業等がある場合は、労災の給付の書類とは別に『死傷病報告書』を届け出ないといけません。
実際に、労災の治療費や休業補償の書類だけ出して、死傷病報告書を出し忘れている会社が書類送検されるケースもけっこうもあります。
■業務命令や就業規則での禁止可能
就業規則で社内の会話を無断で録音すること、社内撮影や動画を取ることは禁止できます。就業規則に「社内での撮影、録音、録画を禁止する」規定を追記して禁止することで、許可のない撮影等は、就業規則違反になり、懲戒処分が可能です。
また業務命令で禁止することも可能です。労働契約上の指揮命令権や施設管理権によって、禁止することができます。従わない場合は、業務命令違反で、懲戒処分が可能となります。
■本人が自分の権利や身を守るため録音したいと言った場合は?
本人が自らの権利を守るために録音すると主張しても、会社は録音等を禁止することができます。
従業員が無断で録音を行っている状況では、他の従業員が怖がって自由な発言ができなかったり、職場環境が悪化することもあるでしょう。また 営業上の秘密が漏洩する危険もあるので、録音禁止の業務命令は、裁判例等でも、正当なものと認められています(甲社事件(東京地裁立川支部 H30.3.28)。
■中小企業の昇給・賃上げ
2022年以降の世界的な物価高を受け、中小企業のお客さんからも「インフレ手当を支給したい」「支給したほうが良いか」と相談を受けることがかなり増えました。
他の企業が賃金を上げれば、従業員の採用や定着に悪影響が出るので、いずれ、賃金を上げる必要があります。
ただし、賃金を上げるには、どのタイミングで賃金を上げるのが適正か、本当に効果があるかを考えないといけません。
毎年10月に最低賃金が上がりますので、最低賃金ギリギリの基本給になっている会社は10月に基本給を最低賃金以上に上げないといけません。
また基本給を上げるのか、賞与などの一時金を上げるのか、手当を上げるのか、まったく意味合いが違います。
基本給や新たな手当を支給するのが、従業員にとってもよいのですが、いったん増やした給与は、減らせません。
売上や利益の見通しが厳しい場合は、賞与や期間限定の手当を支給するのが安心でしょう。
■月額のインフレ手当は、実質の昇給
インフレ手当、昔は物価手当という名称で支給されていたことがあります。
昔は、高度経済成長期やバブル期の物価上昇や首都圏と地方の物価格差を物価手当として支給していた会社もあります。
2022年の物価高は、景気が良くなった、経済が成長したわけではなく、海外のインフレが日本にも影響しているものなので、やすやすと賃金を上げることができる企業は限られているでしょう。
中小企業もぎりぎりの状況で、インフレ手当を出すような状況なので、インフレ手当は慎重に設計する必要があります。
インフレ手当には、次のような種類が考えられます。
(1)毎月支給のインフレ手当(期限を定めず、ずっと支給する)
(2)毎月支給の期間限定のインフレ手当(1年間や2023年3月まで等)
(3)賞与や一時金
(1)の期間を定めず毎月支給するインフレ手当
実質の昇給なので、よっぽど余裕がある会社しか選択できないと思います。
そもそも、インフレ手当の支給条件が難しいので、支給を取りやめることはほぼ不可能でしょう。「物価高なので、インフレ手当を支給します」と決めても、廃止する条件を決めることは困難でしょう。
そもそもインフレ手当を支給するときも、会社の利益や経済の指標をもとに決めているわけではないですよね?
ということは、廃止しようにも、この物価高がどの程度収まったら廃止するという要件は決めようがありません。
ですので、期間を定めず毎月支給するインフレ手当は、ずっと支給するつもりで、制度を作る必要があります。
中小企業は、(2)期間限定インフレ手当か、(3)賞与、一時金が多いでしょう。
私の顧問先のお客さんだと、一時金だとあまりインパクトがないので、毎月出したいと考える経営者が多かったですね。
月額の期間限定で支給する場合は、「インフレ手当は、2023年5月支給給与から2024年4月支給給与までの期間限定で、毎月5,000円を支給する」のような要件で支給することになるでしょう。
インフレ手当は、同一労働同一賃金の関係でいうと、パート、アルバイトにも支給すべきという判断になる可能性が高いので、パート・アルバイト・契約社員がいる場合の設定は、社労士等に相談したほうが良いでしょう。
■インフレ手当は社会保険の対象になるか
インフレ手当は、臨時的・恩恵的なもので労働の対償ではないので、社会保険の対象にならないという見解がありますが、手当が「通常の生計に充てられるもの」として、社会保険料の対象となるという考え方が主流でしょう。
複数の年金事務所に確認しても、インフレ手当は、社会保険の対償になるという考え方を示されました。
インフレ手当は、基本的には社会保険料の対象になりますので(1)か(2)の届け出が必要です。
(1)一時金や賞与・・・賞与扱いなので「賞与支払届」の提出
(2)毎月支給・・・随時改定の対象になり、要件を満たせば「月額変更届」の提出
また毎月支給する場合は、割増賃金の単価に含まれますので、時間外・休日・深夜割増t単価は、インフレ手当の分、UPします。
■部下からのパワハラ(逆パワハラ)はあり得る?
パワハラとは、業務上の「権力(パワー)」を使って、ハラスメント(いやがらせ)をすることなので、部下からのパワハラもあり得ます。
職場におけるパワーハラスメントは、厚生労働省によって以下のように定義づけられていますので、部下から上司へのパワハラも、同僚同士のパワハラもあり得ます。
職場において行われる次の①から③までの要素を全て満たすものをいう。
①優越的な関係を背景とした言動であって
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③労働者の就業環境が害されるもの
■部下からのパワハラ(逆パワハラ)の典型例
(1)指示に従わない、無視する、反発する
部下に業務を依頼しても、指示に従わなかったり、無視したりして、業務を行わない場合は、逆パワハラに該当する可能性があります。
一回の無視や反発などは、パワハラに該当しないこともありますが、「特定の上司の指示等に複数回従わない、自分勝手な主張を繰り返し業務を行わない」などは、パワハラに該当する可能性が高いです。
部下という地位を利用して、「仕事をしない」といういやがらせを上司にしているということです。
(2)暴言、声を荒げる
「上司は無能だ」と暴言を吐いたり、上司に向かって大きな声で怒鳴ったりすることは、労働者(上司)の職業環境を害することがパワハラと判断される要因となります。
(3)何でもかんでも執拗にパワハラだと主張してくる
部下の立場を逆手に取り、事実ではないのに事あるごとにハラスメントだと訴えることは、パワハラに該当することがあります。
またパワハラでないことをパワハラだと吹聴することで、他の従業員にも影響するので、職場環境を害しているとも言えます
(4)複数人でいやがらせをしてくる
複数の部下が結託して、指示に従わなかったりすることもパワハラに該当します。
複数人の部下が協力すれば、上司より強い立場になると考えるからです。
■部下からのパワハラがあることを社内で共有すべき
部下からのパワハラがあることを知らない役職者も多く、高圧的な部下に困っている管理者も多いでしょう。
部下からのパワハラは、上司のプライドもあるので、相談しづらいケースもあります。ほかの部下が社内のハラスメント相談窓口などに、報告や相談ができることも社内で共有すべきでしょう。
会社は、部下からのパワハラを社内で共有し、上司側からも相談しやすい体制を整える必要があります。
■部下のパワハラの処罰は可能
部下のパワハラも、ほかのハラスメントと同様に懲戒処分は可能です。
部下からすると「上司のマネジメント能力が足りない」「自分のほうが有能だ」と思っていることが要因のケースも多いです。
事実、そうだとしても、上司への「表現方法が間違っている」ことでパワハラになっているので、方法が間違いであることを伝え、双方の言い分をヒアリングする必要があります。パワハラはだめですが、どっちもどっちということもよくありますので、一方的に処罰するのではなく、慎重に対応する必要があるでしょう。
■労働条件通知書や雇用契約書への、安易な記載はNG
2024年4月1日以降に労働条件を通知する場合は、「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」を労働条件通知書や雇用契約書に記載する必要があります。
この労働条件を明示するタイミングは、労働契約の締結時と有期雇用の人の労働契約の更新時になります。期間の定めのない雇用契約(定年まで働く無期雇用契約)は、労働契約締結時が労働条件明示のタイミングになります。
■業務の変更の範囲の書き方
『雇い入れ直後:営業職 変更の範囲:会社が指定するすべての業務』
この「業務の変更の範囲」に「営業職」と記載してしまうと、営業以外には、職種変更できなくなると解釈されるので、注意が必要です。
業務の変更の範囲に営業職と書いてあっても、本人が「事務職でもOKと同意」してくれればよいですが、同意しない場合は、変更することができないと考えられます。
■新規事業に進出した場合はどうなる?
業務の変更の範囲は、現在が「想定することができる業務のみ記載すればよい」とされていますので、新規事業に進出した場合は、その業務が変更の範囲に記載していなくても職種変更をさせることができると考えられます。
しかし、将来のことはわかりませんし、もめごとを防ぐために、正社員等の無期契約の場合は、定年になる数十年後まで適用されることもあり、変更の範囲は「会社が指定する業務」や「会社が指定するすべての業務」という表記がよいでしょう。
■就業場所の変更の範囲の書き方
『雇い入れ直後:本社 変更の範囲:会社が指定するすべての場所』
この「就業の場所の範囲」に「本社」と記載してしまうと、本社以外では、働かせることができないと解釈されるので、注意が必要です。
就業場所の変更の範囲も同様に本人の同意なしでは、変更することができないと考えられますので、「変更の範囲を本社」と書いてしまった場合は、本人の同意なく転勤などの働く場所の変更はできないと解釈されます。
■正社員は特に注意
正社員の労働条件通知書や雇用契約書は、定年まで有効な期間の定めのない契約(無期契約)の場合が多いので、20歳で無期契約の雇用契約を結ぶと、業務変更の範囲も40年以上も拘束されることになります。
ですので、業務の変更の範囲は、「会社が指定する業務」や「会社が指定するすべての業務」とし、就業場所の変更範囲は、「会社が指定する場所」や「会社が指定するすべての場所」とし、全業務や全場所を指定できるようにしましょう。
■2カ月以内の期間を定めて使用される人とは?
適用除外の要件は?
社会保険(健康保険、厚生年金)の適用除外の要件に『2カ月以内の期間を定めて使用される人』とありますが、これは、かなり説明不足です。
実態は『更新しないことが確実な臨時的な2か月の雇用契約』は社会保険の適用除外になります。
しかし、次の条件に該当する場合は、2か月契約でも社会保険に加入しなければなりません。
①2月以内の雇用契約が更新されることが見込まれる
・就業規則や雇用契約書その他の書面において、「更新される旨」または「更新 される場合がある旨」が明示されている
・同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき使用されている者が、契約更新等により最初の雇用契約の期間を超えて使用された実績がある
②試用期間が2か月でも、雇用契約は2か月以上となっている場合
2か月の雇用契約を結ぶ場合で、上記①②に当てはまらず、社会保険の適用除外に該当するケースは皆無じゃないでしょうか。
実際に、社会保険の調査、年金事務所の調査では、雇い入れ時にさかのぼって社会保険に加入を指導されることになります。
■社会保険の対象になる手当とは
次の2つの要件を満たすものは、月の社会保険料の対象になります。
※(1)労働の対償として支給されるのすべてのもの
※(2)固定的に連続して支給され、通常の生計にあてられるもの
※(1)
ただし、①実費弁償的なもの(出張旅費)や②任意恩恵的に支給される
もので、就業規則や雇用契約に明記していないもの(見舞金)③臨時のもの
(大入り袋)などは社会保険料の対象になりません。逆に言えばそれ以外は、
すべて社会保険料の対象になります。
※(2)
毎月定額で支給されていない場合は、月の社会保険料には当たりませんが、
賞与として社会保険料の対象になる可能性があります。
基本的に給料として払うものは、すべて社会保険料の対象になります。
・基本給、歩合給、毎月支給されるインセンティブや能力給
・残業手当、家族手当、住宅手当、通勤手当、通勤定期代、有給休暇手当、皆勤
手当、単身赴任手当、帰省旅費…
■単身赴任手当は、社会保険の対象になるか?
単身赴任手当は、社会保険料の対象になります。
■異動前や転勤前の引越代、転勤交通費は、対象になるか?
■有給休暇の対象となる手当は、どのように計算する?
有給休暇を取ったアルバイトに払う有給休暇手当の計算方法は、①~③の次のいずれかです。
またどの方法で支払うかを、その都度決めるということは原則として認められておらず、どの方法で支払うかはあらかじめ就業規則等で明確に規定しておくことが必要です。
①労働基準法の平均賃金
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③健康保険法による標準報酬日額に相当する額(労使協定で定める必要あり)
※③標準報酬月額の30分の1×その日の所定労働時間
②の通常の賃金で支払う場合は、どの手当が対象になるかというと、有給休暇取得日に働いた場合に支給するすべての手当です。
基本給はもちろんのこと、通勤手当や土日祝日手当、みなし残業代、歩合給などその日働いたら支給していた手当すべてを支払うことになります。
歩合給は、その賃金計算期間で計算した歩合給を総労働時間で割った金額をその賃金計算期間の1日平均所定労働時間を乗じた金額(歩合給÷総労働時間×1日平均所定労働時間=歩合給分の有給手当)になります。
ただし、通勤手当は、就業規則に有給休暇の除外規定を設けることで除外できることがあります。
■何時間分の有給休暇手当を払えばよい?
②通常の賃金で支払う場合
基本的には、上記の②『所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金』で有給休暇を取った日に働くはずだった時間分の有給休暇手当を払う会社が多いでしょう。
ただし、シフト制のアルバイトが、シフト作成時に有給休暇の申請があった場合、その日の働くはずだった所定労働時間がよくわからないことがあります。ただし、そうはいっても法律では、有給休暇は労働日に利用することになっており、労働日というのはその日の労働時間が決まっていることが前提なので、その日働くはずだった所定労働時間が分からないことはあり得ないと考えます。
このような場合で、毎日の働く時間が一定の場合は、その時間の時間給と諸手当を支払うことになるでしょうが、そうでない場合は、シフトを確定させてから有給休暇を取得することになります。
次の平均賃金で支払う方法を選択していれば、シフトがばらばらでも問題ないのですが、こちらも計算方法がかなりややこしいです。
①平均賃金で支払う場合
平均賃金で支払う場合は、有給休暇を取る日の直近3か月で平均賃金を算定します。平均賃金は、1日〇〇〇〇円と計算されるので、1日1時間働くシフトでも、1日8時間働くシフトでも同じ金額になります。
また平均賃金は、直近3か月の給与の合計や働いた日数で金額が変わるため、有給休暇を取得する時期によって、有給休暇の手当の金額が変わることになります。
■最低賃金1,500円、正社員の最低月給が260,000円
2023年8月31日に岸田政権が発表した政府の新しい目標によれば、2030年代半ばまでに日本の最低賃金は、全国加重平均で時給1500円に引き上げられることが予定されています。
この予測を表にすると・・・
全国加重平均 | 愛知 | 東京 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
年月 | UP率 | 時給 | 月給換算 | 時給 | 月給換算 | 時給 | 月給換算 |
2023年10月 | 1,004 | 174,495 | 1,027 | 178,492 | 1,113 | 193,439 | |
2024年10月 | 3.4% | 1,038 | 180,404 | 1,062 | 184,575 | 1,151 | 200,043 |
2025年10月 | 3.4% | 1,073 | 186,487 | 1,098 | 190,832 | 1,190 | 206,822 |
2026年10月 | 3.4% | 1,110 | 192,918 | 1,135 | 197,263 | 1,231 | 213,947 |
2027年10月 | 3.4% | 1,148 | 199,522 | 1,174 | 204,041 | 1,273 | 221,247 |
2028年10月 | 3.4% | 1,187 | 206,300 | 1,214 | 210,993 | 1,316 | 228,720 |
2029年10月 | 3.4% | 1,227 | 213,252 | 1,255 | 218,119 | 1,361 | 236,541 |
2030年10月 | 3.4% | 1,269 | 220,552 | 1,298 | 225,592 | 1,407 | 244,536 |
2031年10月 | 3.4% | 1,312 | 228,025 | 1,342 | 233,239 | 1,455 | 252,879 |
2032年10月 | 3.4% | 1,357 | 235,846 | 1,388 | 241,234 | 1,504 | 261,395 |
2033年10月 | 3.4% | 1,403 | 243,841 | 1,435 | 249,403 | 1,555 | 270,259 |
2034年10月 | 3.4% | 1,451 | 252,183 | 1,484 | 257,919 | 1,608 | 279,470 |
2035年10月 | 3.4% | 1,500 | 260,700 | 1,534 | 266,609 | 1,663 | 289,029 |
※あくまで毎年3.4%ずつ最低賃金が上がると仮定した予測の金額です。
■最低賃金が上がることのリスク
この政策は、中小企業にとって大きな挑戦をもたらす可能性があります。
特に、業績が不確実な状況下での賃金上昇は、雇用創出に対して悪影響を及ぼす可能性があるため、企業は人件費の増加にどのように対応するかを慎重に検討する必要があります。
中小企業の経営上のリスクには、以下のようなものが含まれます
1.財務的な圧力の増大
最低賃金の引き上げは、特に人件費が大きな割合を占める業種では、利益の圧縮を招く可能性があります。
2.雇用構造の変化
最低賃金の増加は正規雇用のコストを上昇させ、企業が非正規雇用へとシフトする動機を強化するかもしれません。これにより、労働市場全体の不安定さが増すことが懸念されます。
3.生産性の向上
賃金が上がると、企業は労働生産性の向上を迫られることになります。そのため、効率的な業務プロセスや技術投資が必要とされるでしょう。
■対策
以下のような対応が必要になるでしょう。
1.離職率の低減と採用と育成方法の見直し
働きやすい職場を本気で目指し、離職率の低減を目指すことが最も近道でし
ょう。今までのように「良い人」を採用したくても、支払える給与には限界が
あります。
これからは、「普通の人」「仕事があまりできなくても、性格がよく、長く働
いてくれる人」を採用し、従業員が企業に長く留まることで、経験値や技術力
を少しずつ上げてもらうような、採用や育成方法にシフトしていくことも考え
ていくことが必要です。
2.労働生産性の向上
技術導入や効率化を進め、生産性を向上させることが求められます。
生産性を向上させたり、業務効率化を進めるうえで、デジタルツールの導入や
業務プロセスの見直しが必要とされるでしょう。
デジタル化やオートメーションの導入により、生産性を向上させ、人件費の
増加を相殺することも選択肢に入れざるを得ないでしょう。
3.価格転嫁
コスト増加を商品やサービスの価格に反映させる必要も出てくるでしょう。
4.給与体系の見直し
あまりに速いスピードで最低賃金が上がるので、今までの給与体系のままでは対応できない企業が急増することが予想されます。
基本給だけでなく、『等級制度』『固定残業手当』『賞与』『家族手当や住宅手当の属人的な手当』などを見直したり、新たに設計したりして、対応する必要があります。ただし、成果主義や資格等級制度の導入は、辞めたほうが良いでしょう。
■成果主義は、導入してはいけません
1990年代後半から2000年代にブームになった『成果主義』や『資格等級制度』は、その運用の難しさから、導入した企業のほとんどが失敗しています。
しかし、コロナ禍で『成果主義の導入ブームが再燃』し、さらに最低賃金の引き上げによって、成果主義の導入を考える企業も増えてくることが予想されます。
今までの成果主義制度には、根本的な欠陥がいくつもあります。
その一つが『従業員の自意識』にあります。
■従業員が考える公平性と会社が考える公平性
会社:成果主義を導入して、全員に『公平な』給与体系にしたい。
成果を出している人は報酬を与え、成果が出ない人は評価しない。
従業員:今の仕事を考えると自分の給与には納得いっていない。会社が『公平』
に評価してくれるなら給与が上がるはずだ。
従業員の大多数は、「自分はもっと給与をもらってもよい。自分の仕事に対して給与が低い」と思っています。
そもそも、自分を客観視できる従業員は少ないです。
全体を俯瞰してみることができるのは、経営者や役職者の立場がそうさせているので、役職がない一般社員は自分の目に見える範囲で自分の都合の良い解釈をしがちです。
その結果、「公平に評価するって会社が言ったのに、給与が上がらない。こんなのおかしい!!」と不満が高まります。
成果主義は、全員が給与があがるわけではないので、従業員の一部に大きな不満がたまって、モチベーションが低下し、様々なところでボトルネックが発生してしまいます。
■成果主義が失敗する根本的理由
さらに実務上は次のようなケースで。運用が失敗してしまいます。
・評価者によって、評価に差が出る。評価者Aさんは厳しめの査定だが、Bさん甘め
の査定になり、評価基準が統一されない
・評価を伝える人の伝え方が下手で、従業員のモチベーションが下がる
・そもそも成果を個人に結び付けるのが困難で、評価について従業員に納得しても
らう説明ができない。その材料がない
・事務職や管理職など、数値で表せない業務の評価が難しく、従業員のモチベー
ションが下がる。
・お金で動く社員はお金で去っていく。お金や数値しかみず、あつれきが生まれる
・個人とチームが対立するなど、チームワークの弊害が生まれる
■しかし、給与体系の変更はせねば・・・
成果主義を含む給与体系の変更は、社労士や人事コンサルタントの専門分野です。が、しかし・・多くの社労士やコンサルタントは自分たちが持っている「一定のパターン」に企業をあてはめるだけで、運用は企業任せということも多く、そのような制度が失敗するのは目に見えています。
中小企業が自ら運用できる制度であることが大前提ですし、導入後は、必ずバージョンアップやブラッシュアップをする必要があります。
給与体系の変更でお悩みの経営者や人事労務担当者は、ぜひ一度、ポプラ社会保険労務士事務所の『無料相談』をお試しください。
当事務所は、困っている経営者の味方です。初めての方も、遠慮せずにお電話ください!
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